バリュー投資入門(1) バフェット2017(1)
バリュー投資の本家 ウォーレン・バフェット
バリュー投資といえばウォーレン・バフェットの名前が思い浮かびます。バフェットの投資活動の中心は、自らが会長兼CEOを務め、筆頭株主でもある持株会社兼投資ファンドのバークシャー・ハサウェイです。その株式はニューヨーク証券取引所に上場されています。バフェットはそのアニュアルレポートの「バークシャー・ハサウェイの株主へ」(“To the Shareholders of Berkshire Hathaway Inc.” 以下、株主への手紙)で、事業と投資活動を説明し、その背後にある考え方を明らかにしています。
バフェットのバリュー投資の神髄に触れるには、やはりバフェット自身の言葉でつづられた株主への手紙を読むことが欠かせないと思います。
直近の2017年の株主への手紙(2018/2/24)から3つのポイントを述べたいと思います。
1. 過去53年間の驚くべき投資パフォーマンス
冒頭の表で過去53年間(1965-2017)のバークシャー株のパフォーマンスを示しています。
3つのリターン
バフェットは、バークシャーの一株当たりの簿価BVPS、一株当たり時価(つまり株価)とS&P500インデックス(配当込み)のパフォーマンスを比較しています。
市場平均を大幅に上回るリターン
バークシャー株の一株当たり簿価BVPSの平均リターン(年率複利)は19.1%、一株当たり時価(株価)の平均リターン(同)は20.9%、S&P500インデックス(配当込み)の平均リターン(同)は9.9%です。つまり、バークシャー株のパフォーマンスは一株当たり簿価で、市場平均に対して9.2%ポイント、一株当たり時価は11.0%ポイント上回っています。
これだけの大きな年率リターンの差が長期に続くと、実額ベースでは驚くべき差になります。バークシャー株の一株当たり簿価は53年間で10,880倍、株価は24,047倍、S&P500(配当込み)は1,551倍です。つまり、市場平均に対して簿価で7.0倍、株価(時価)で15.5倍の増加です。これも同表で示されています。
一株当たり簿価BVPSを重視
ここで、バフェットが一株当たり簿価BVPSを示していることが重要です。これがバフェットのバリュー投資のポイントであると思います。ここでは、バークシャー・ハサウェイの投資パフォーマンスを示しているのですが、バフェットは株式投資においても同様の発想に基づいて行っているのです。つまり、これがバフェットのバリュー投資の神髄といえるものです。
株価はファンダメンタルにいずれついてくる
バフェットにとって重要なのは、まず株価ではなく事業において一株当たりの株主資本、つまり簿価BVPSを増やすことであり、それがいずれ株価の上昇につながるという考え方です。そして、冒頭の表に示されている通り、株価は簿価以上に上昇しているのです。
言い換えれば、バフェットのバリュー投資において最も重要な指標は、一株当たり簿価(BVPS)であり、バフェットの投資対象となるのは、一株当たり簿価BVPSと比較して、株価が低く評価されている株式です。つまり、この限りでは低PBR銘柄ということになります。
低PBR銘柄への投資ではない
しかし、ここでより重要なのは、バフェットのバリュー投資は単に低PBR銘柄に投資するというものではないということです。より重要なのは、一株当たり簿価BVPSの成長が見込める企業の株式であるということです。
一般に低PBR銘柄というのは、一株当たり簿価BVPSの成長が見込めない、あるいは減少するとみなされる企業が多いのです。市場はそれを折り込んでいる、だからこそ株価が一株当たり簿価BVPSよりも低くなっているのです。
低PBR銘柄は割安ではない
くり返しになりますが、一般に低PBR銘柄は必ずしも割安銘柄では無いということです。市場はその企業の一株当たり簿価BVPSが今後、さらに下落する可能性が高い、ということを折り込んでいるのです。だからこそPBRが低く評価されるわけです。
BVPSの成長が期待できる企業の株式
したがって、バフェットのバリュー投資は、単なる低PBR銘柄への投資ではなく、一株当たり簿価BVPSの成長が今後見込める企業の株式を発見する、発掘することなのです。ここにバフェットのバリュー投資の神髄があるのではないかと思います。
事業、経営陣の重要性
そして、それは時として、企業経営に働きかけてBVPSを成長せしめるよう転換していくことを含む訳です。バフェットが事業と経営陣の質を重視するのはこのためです。
(続く)
2017/7/25
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