リサーチのアンバンドリング(SAJ Jan.2019を読む)

中湖 康太

リサーチのアンバンドリングについて

証券アナリストジャーナル(SAJ) (Jan. 2019)特集「MiFID II 導入後の状況と展望」の中で、リサーチのアンバンドリングのことが述べられている。

欧州のMiFID II

MiFID(Markets in Financial Instruments Directive)というのはの欧州で導入された金融市場と金融サービスに関する新たな規制である。適用開始から約1年になる。特に興味深いのはリサーチ・サービスのアンバンドリング(分離)である。

フィーの削減の動き

基本的にはセルサイドのブローカレッジ手数料の削減、および必要な、優れたリサーチだけにフィーを払う動きであるといって良いだろう。

バイサイドからすれば、運用パフォーマンスをよくするために不必要なフィー(手数料)は削減したいだろう。売買執行のブローカレッジサービスを提供するセルサイドからすれば、リサーチを提供することで一定水準のフィー(手数料)を確保するという狙いがあるわけである。

アンバンドリング(分離)するということは、バイサイドからすれば、ブローカレッジはより低廉にFINTECHといわないまでもインターネットで低廉に行い、必要なリサーチだけにフィーを払うということを可能にするわけである。

様々な質・量のレポートがごっちゃまぜになって提供されてきた

恐らく、セルサイドのリサーチはこれまで、様々な質と量のレポート、サービスが混ぜこぜになって提供されてきたといえるだろう。

システム化されたリサーチ、オピニオンを含む簡易でタイムリーなリサーチ、精緻で深い分析を行った(in-depth)リサーチとおよそ3つぐらいのグループに分けられるのではないだろうか。中途半端なリサーチは淘汰されるだろう。

多様で特化・先鋭化したリサーチの必要性

これはリサーチにとって試練である。しかし、このような試練を通して、多様なリサーチがその特徴、セールスポイントを先鋭化して提供されることにもなるだろう。

リサーチは必須:市場は情報とその分析によって価格が形成される場

いずれにしてもバイサイドにとって、リサーチは必須のものである。また、マーケットは情報の流通とその分析の無数の行いによって価格が形成される場である。

キャピタルマーケットのエボリューション

リサーチのアンバンドリングが、証券市場、キャピタルマーケットのエボリューション(進化)に繋がることを期待したい。

 

5/4/2019

Kota Nakako

 

 

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