英国フィンテック企業とのラウンドテーブル@駐日英国大使館

2017-01-24

英国フィンテック企業とのラウンドテーブル

駐日英国大使館で、英国フィンテック企業とのラウンドテーブルがあった。2017119日、主催は、英国政府国際通商部、駐日英国大使館主催、協力はAIMA(Alternative Investment Mangagement Association: オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエイション)

フィンテック(FinTech)FinanceTechnologyを合成した造語であり、金融とテクノロジーが関わるあらゆる分野のサービスやアプリケーションを意味する。近年の金融資本市場は、まさにグローバル化とテクノロジーの進化により、敏感に、神経質に全世界での事象や情報に反応し、リスクのオンとオフが目まぐるしく入れ替わるようになってきていると感じる。フィンテックはまさにそのような市場環境の原因の一つであると同時に、適応のために必須になってきているといえるだろう。

ロボ・リサーチ、コンプライアンス(税務)、投資家とファンドマネジャーを繋ぐオンラインプラットフォーム、コンプライアンス(開示義務)、リスクマネジメントのロボ・プラットフォームを提供する英国フィンテック企業5社のラウンドテーブルが持たれた。

下記に、各企業の簡単なプロフィールと印象を記する。

ClearMacro

機関投資家のポートフォリオ・リターンを改善し、投資プロセスの効率化を支援するソフトプラットフォームを提供する。クラウド上で、リサーチサービスとしてもモジュール式で投資プロセスを支援する。

www.clearmacro.com

(印象) グローバル化に伴う、リスクのオン・オフがくりかえされる変動(ボラティリティ)の激しい市場環境において投資意思決定を支援するロボ・リサーチというのは有用なツールであろう。実際には、ロボットシステムの継続的なチューニング、レビューが必要になるのではないだろうか。

DivDoc

米国のFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)、US Chapter3(非米国人で米国の源泉税の対象となることに関わる)における源泉徴収と金融口座情報自動交換に関わる規制に対応するデジタル・コンプライアンス・プラットフォームを提供。

www.divdoc.me

(印象) 投資のグローバル化に伴い、税務上のコンプライアンスは益々重要になってきている。例えば、投資家として米国株配当に係る二重課税を受けるのは当然避けたいところである。DivDocはこのようなニーズに応えている。証券会社や会計ソフトがこのようなサービスを提供してくれればありがたい。

Edgefolio

投資家とファンドマネジャーを直接つなぐオンラインプラットフォームを提供。投資家は、同プラットフォームで演算処理、ファンド関連書類閲覧、ポートフォリオ構築ができ、ファンドマネジャーは、投資家プロフィールから、投資家へファンドデータの送信、ファクトシート生成、顧客に合わせたIRポータルを作成できる。Edgefolio経由の運用資産は既に1.3兆ドルに及ぶという。

https://edgefolio.com

(印象) Edgefolioは既に、様々な日本企業、ネット証券を含む証券会社、資産運用会社と事業関係を構築しているようで、知らず知らずにすでにそのサービスを享受しているのかもしれないとの印象を受けた。投資の世界≒情報の世界であるといってよく、インターネットによる効率化がなじみやすい分野であろう。参入障壁が低い可能性がある一方、高いシェアを取った企業がドミナントになる可能性もある。

Fundapps

顧客のコンプライアンス業務をシンプルにするサービスを提供。既に世界有数の機関投資家、ヘッジファンドが同社のサービスを利用している。「保有株式の開示」、「投資規制」の2つのサービスを提供し、コンプライアンス担当者のモニタリング、開示義務に関する業務を支援する。

www.fundapps.co

(印象) 情報開示のコンプライアンスは、プロフェッショナルとして最重要事項のひとつである。金融機関、投資銀行、機関投資家にローコストでプラットフォームが提供されれば、ニーズは高いであろう。日本市場のポテンシャルは高いとしたが、コンプライアンスにはグローバルとローカルがあり、双方にどう対処するかが注目される。 

RiskSave

リスクマネジメントこそリターンを向上の鍵と考え、デリバティブ評価やポートフォリオ管理の経験豊かなスペシャリストによって開発された「ロボ投資プラットフォーム」を提供する。既存のロボアドバイザーで使用されている平均分散最適化アプローチの改良も行っている。

www.risksave.com

(印象)「リスクマネジメントを制するものが投資を制する」というのは全く同感である。神経質で変動の激しい近年の資本市場では、ロボ投資プラットフォームは、金融機関、投資銀行、機関投資家のみならず、個人投資家にもニーズが高まってきているといえるかもしれない。ただし、最後は人間、投資家によるチューニング、レビューが必要になるだろう。投資はサイエンスであると同時にアートでもあり、そこがまた投資の醍醐味でもあるのだから。

以上

2017/1/24

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