サステナブルな消費
サステナブルな消費=地球にやさしい消費
サステナブルな消費というのは、やさしく言えば、地球にやさしい消費、ということになるだろう。環境に配慮した消費行動といってもよい。
フードロス(食品破棄)の問題
例えば、現在、大量のフードロス(食品破棄)が発生している。その要因のひとつとして、消費者が、おなじ食品なら賞味期限の長い食品を買ってしまうということ、また生産者も消費者の新鮮度重視、安全志向から、賞味期限を必要以上に短くして食品を破棄してしまう、ということがある。
しかし、これには、食品破棄のための直接的なコストだけでなく、大きな環境コストが発生しているといってよいだろう。地球環境に負荷がかかっていることになる。
環境コストを意識した消費者行動
フードロスを減らすには、身近な例で言えば、例えば賞味期限が短いものと、長いものがあった場合、必要以上に長いものを選ばず、短いものを消費する、という行動が望ましいことになる。28日にスーパーへ行って、ある食品の賞味期限が30日と翌月の3日だったとする。その食品が食卓に並ぶのが29日の予定だ。食品の新鮮度を重視するあまり、翌月3日の食品を購入する人が多いのではないだろうか。しかし、フードロスを減らす、それによって地球環境への負荷をなくす、という意識があれば、30日の食品を選ぶのが適切である、ということになる。
環境コストをかけない生産
拙著「財布がふくらむ 利他の経済学」で、環境コストを反映していない商品の過剰生産・消費による問題について述べた。これは、経済学でいえば外部不経済の問題になる。同じ商品で、直接的なニーズを満たすだけなら、消費者は価格が安い商品を選ぶだろう。しかし、同じ商品でも、一方は、環境汚染をしない方法で生産されており、他方は、環境汚染を生じる方法で生産されている。この生産方法の違いを消費者が知らなければ、高い方の商品を買う消費者はいないだろう。
生産者の情報発信の重要性とブランド・バリュー
ここで、重要なのは、消費者が環境コストを意識することであり、生産者は、その生産方法の違い(環境汚染をしない方法で生産していること)という情報を消費者に発信することである。
利他の経済学とサステナブルな消費・生産
拙著「利他の経済学」では、企業の製品差別化の方法として、環境コストを発生しない製品商品開発、生産をあげた。たとえ一見同じ商品・製品であっても、サステナブルか否かという生産方法の違いがあるわけである。これが、製品差別化となり、それはブランド・バリューに結びつくことになるだろう。
フードロスを減らすのと同様に、環境コストを意識するならば、地球負荷を発生しない方法で生産された商品を購入する消費者が増加することになるだろう。これがサステナブルな消費である。
中湖 康太
2019.10.28
(参考文献)
「特集・サステナブルな消費」<座談会: SDGs 実現のために消費をどう変えていくか> 三田評論 2019年8・9月号
出席者: 岡村和美(前消費者庁長官)、冨永愛(ファッションモデル)、高橋功一(㈱日本フードエコロジーセンター代表取締役)、蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授; 司会) 敬称略
(注) SDGs
SDGsとは、Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)の略で、2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発のための17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる、国連の開発目標。”Transforming our world:the 2030 Agenda for Sustainable Development”(我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)と題する成果文書で示された2030年に向けた具体的行動指針。