証券アナリストジャーナルFEB.2018特集「資産運用における為替管理」読む

中湖 康太

証券アナリストジャーナルFEB.2018 特集「資産運用における為替管理」

国際分散投資のおける為替管理について、5本の論文が載せられています。主として機関投資家向けの内容ですが、海外資産に投資する際に為替リスクとどう向き合うかは重要な課題です。興味深い内容についてピックアップし、若干のコメントを述べたいと思います。

1)    市場センチメントの悪化と円高が相関し、国内株式とヘッジなし外国株式はリスク水準が同程度で、国内株式は外国株式並みの為替リスクが含まれている可能性があること(日下部・番場論文「資産運用における為替管理―為替ヘッジの再考」

2)    為替市場の取引は実需以外が圧倒的なことから、ファンダメンタル分析による為替予測がほとんど役に立たないこと。購買力平価を金融資産で考える金融購買力平価という考え方ができる(ロナルド・リーシング論文「・・・高まる為替管理ポリシーの重要性」

(コメント)

国内株式にも外国株式と同等の為替リスクが含まれている

1)    について。これは、円高株安、円安株高の現象です。為替リスクという点においては、国内株式、海外株式の違いはあまり意識する必要が無い、というインプリケーションがあります。

ヘッジフリー(為替ヘッジはしない) 

とすれば、国際分散投資の観点からヘッジ無しで投資する方が、ヘッジコストがかからない分良いのではないか、という考え方が出てきます。自身は、この考え方で海外資産に投資しています。為替でリターンを得ることを目的としていないからです。

国際分散投資の本質

また、本質論からして、国際分散投資とは資産の分散であると同時に通貨の分散でもあると考えるのが自然ではないかと思います。

2)    について。

為替のファンダメンタル分析の重視

適正為替レートについて個人的にはファンダメンタルな分析を重視しています。短期的投機的資本移動による為替変動にまともに向き合う能力も、余裕もなく、またそれに大きな意義が感じないからです。

国内株式を使ったオルタナティブ投資 

ファンダメンタル分析から為替が円安であると判断されるときは、直接外国資産を買うのでなくオルタナティブ投資として海外へのエクスポージャーの高い国内株式を買うというのが1つの選択肢です。ちなみに現在は、裁量的な金融政策により円ドル為替レートは適正水準より円が過小評価されていると個人的には見ています。

投資家特性により為替ヘッジニーズは異なる

上記のコメントは個人的なものです。資産負債管理(ALM)等の観点から、円負債に対しては、円資産での運用する必要性から為替ヘッジが適切な場合があるでしょう。つまり、為替リスク管理のあり方は、それぞれの投資家の特性によって異なってくるということです。その意味で、リーシング論文の「為替管理ポリシーの重要性」というのは的を得た指摘であると言えるでしょう。

2018/2/18

© kota nakako, gcs

 

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