個別コモディティ先物でポートフォリオを味付け(JAI, Spring 2017)
「コモディティ先物でポートフォリオを味付けする-なおも良いレシピか?」“Spicing Up a Portfolio with Commodity Futures; Still a Good Recipe?”, ROBERT T. DAIGLER, BRICE DUPOYET, AND LEYUAN YOU, THE JOURNAL OF ALTERNATIVE INVESTMENTS, SPRING 2017
インフレ懸念
オルタナティブ投資ジャーナル2017年春号(Journal of Alternative Investment, Spring 2017)にコモディティ関連の論文が2つ掲載されている。実質的に完全雇用の状態にあると推定される米国経済で、FRBは利上げに舵を取る中、トランプ政権が積極的な財政政策を検討している、となればインフレ期待というべきか、インフレ懸念が出てくるのは自然の成行きである。グローバルな投資家の関心はデフレからインフレにシフトしていることをうかがわせる、と考えるのは早計であろうか。
急増するコモディティ投資
もっとも、近年、コモディティの株式との低い相関から期待される分散効果、インフレヘッジ機能のゆえに、コモディティは、機関投資家のポートフォリオに独立した位置を占めるにいたり、投資が急増している。ゆえにリターンが低下しているという側面も指摘されている。両論文はそれを克服するためのアイデアを提供している。
個別コモディティ先物を使った差別化
本コラムでは、2回にわたり、両論文の問題意識と結論について簡単に紹介しよう(詳細、正確には原典参照のこと)。今回は、まず表題の個別コモディティ先物を使ったポートフォリオ運用についての論文(「コモディティ先物でポートフォリオを味付けする-なおも良いレシピか?」“Spicing Up a Portfolio with Commodity Futures; Still a Good Recipe?”, ROBERT T. DAIGLER, BRICE DUPOYET, AND LEYUAN YOU, Journal of Alternative Investment, SPRING 2017)について。
コモディティ先物に関するポートフォリオの実証研究は、しばしばコモディティと株式に逆相関があることを示している。この特性は、ポートフォリオ運用の分散と最適化のために高く評価されている。分散効果、リスクを減少させ、リターンを高める可能性を提供している。しかし、最近のコモディティ投資の増加は、株式とコモディティの相関性を高めることになった。
異なるカテゴリーのコモディティ先物間の低相関
そこで、コモディティ先物指数ではなく、個別のコモディティ先物契約を用いて検証を行った。その結果、個別コモディティ先物を用いることで、リスクを減らし(個別先物間の低相関による)、リターンを高めることができることを示した。さらに、本研究では、これまでの研究で不十分であった、リスクレベル、リバランス期間、テイル・リスク、運用期間が結果に与える影響についても検証を行っている。
簡単な相関性の分析により、同カテゴリーの先物契約の相関性は高いが、異なるカテゴリーの先物契約は低いということが明らかになった。つまり、異なるカテゴリーに属する先物契約を含めることで分散効果を得ることができるわけである。極端な事象における損失も、先物ポートフォリオは、様々な株式指数ベンチマークに対して、首尾一貫して低くなっている。
より高いリターン、より低いリスク;極端な事象へのヘッジ
ポートフォリオに個別コモディティ先物を加えることにより、より良いパフォーマンス、より高いシャープレシオ、より低いボラティリティをもたらし、極端な事象に起因する損失を大幅に減少させることを可能にするであろう。多分、最も重要な点は、非株式先物契約をポートフォリオに加えることで、リスクを大幅に減少させると期待できることであろう。
2017.4.9