リカード「経済学原理」を歩く-109 税金-4
【コメント】リカードは、税金が資本に課されることになれば、その国の将来の生産の減少につながるため、それは絶対に回避すべきであるとする。ISバランスで考えれば、投資を損なわないように、貯蓄が維持されるべきということになる。税金分の支出は、投資ではなく、消費を減少させることが望ましい、というわけだ。そうすれば、民間のかわりに政府が支出し、総需要は減少することなく、また、資本は損なわれないということになる。
(訳)
人生における地位と最盛期の富を維持したいというすべての人が持つ願望は、税金の誘因となる、といえる。税は、資本に課されるものであれ、所得に課されるものであれ、所得から払われることになる。したがって、課税が発生し、政府が支出を増やすと、比例して資本と所得が増加しなければ、人々の年間の支出は減少することになるだろう。人々にこうした傾向を奨励することは政府の政策であるべきだろう。そして、このような税は、決して資本に課されるべきではない。それは、労働を維持するための基金を損ない、その国の将来の生産の減少につながるからである。
(original text)
The desire which every man has to keep his station in life, and to maintain his wealth at the height which it has once attained, occasions most taxes, whether laid on capital or on income, to be paid from income; and therefore as taxation proceeds, or as government increases its expenditure, the annual expenditure of the people must be diminished, unless they are enabled proportionally to increase their capitals and income. It should be the policy of governments to encourage a disposition to do this in the people, and never to lay such taxes as will inevitably fall on capital; since by so doing, they impair the funds for the maintenance of labour, and thereby diminish the future production of the country.
英国においては、遺産書への課税、遺産税、財産を被相続人から相続人に移すのを妨げる全ての税金において、このような政策は無視されてきた。もし、1000ポンドの遺産に100ポンドの税金が課されると、遺産受取人は継承される資産は900ポンドとみなすだろう。その支出から100ポンドの税を節約しようという特別な動機を持たないだろう。したがって、この国から資本が減少することになる。しかし、もし実際に1000ポンドを受取れば、それが所得であり、ワインであれ、馬であれ、使用人であれ、そこから税金として100ポンド払うことになれば、おそらく、その分の支出を増加させないかもしれない。そうすれば、その国の資本はそこなわれないかもしれない。
In England this policy has been neglected, in taxing the probates of wills, in the legacy duty, and in all taxes affecting the transference of property from the dead to the living. If a legacy of 1000l. be subject to a tax of 100l., the legatee considers his legacy as only 900l., and feels no particular motive to save the 100l. duty from his expenditure, and thus the capital of the country is diminished; but if he had really received 1000l. and had been required to pay 100l. as a tax on income, on wine, on horses, or on servants, he would probably have diminished, or rather not increased his expenditure by that sum, and the capital of the country would have been unimpaired.
Kota Nakako
6/5/19