Notes on Ricardo’s Principles (41) – 地代 13
穀物地代と貨幣地代
穀物地代は生産力の差、貨幣地代はさらに生産力の逓減率を反映して決定される;
ゆえに貨幣地代はより累進的に増加する
リカードは地代論の最後で、穀物地代と貨幣地代の違いについて述べる。ここでリカードがいわんとすることは、(穀物)地代は土地の生産力の差によって決定されるが、貨幣地代(名目地代)は限界地の穀物価格に生産力の差が反映され、その価格が全てのより優位な等級で発生した差額穀物地代に反映されるために、貨幣地代の上昇率はより高くなるということである。言い換えると、穀物地代は実質的な生産力の違い、差を反映して決定されるが、貨幣地代は、生産力の違いと(限界)生産力の低下率(逓減率)を反映して決定されるため、穀物地代よりも累進的に上昇するのである。
リカードの数値例は、ポンド(£)、シリング(s)、ペンス(d)という、10進法、12進法、20進法の混じった複雑なイギリスの通貨単位で説明されているので非常にわかりにくい。以下で、筆者(KN)は、全てペンス(d)に置き直して10進法でリカードの主張を解読することにする(1971年以前の通貨換算; £1=20s=240d)。
リカードの数値例の解読
リカードの数値例を10進法で置き換えると以下の通りとなろう。
土地に追加的に10人の労働を投入していく。そして、その追加的小麦生産量、価格、差額地代、穀物地代、貨幣地代は、次のようになる;
土地の等級 労働投入 生産量 価格(d)
1 10 180 960
2 10 170 1016
3 10 160 1080
4 10 150 1152
5 10 140 1224
差額地代 穀物地代 限界地 価格(d) 貨幣地代(d)
10 10 等級2 (170) 1016 10160
10 20 等級3 (160) 1080 21600
10 30 等級4 (150) 1152 34560
10 40 等級5 (140) 1224 49360
(以下、リカードの叙述)
穀物地代と貨幣地代の変化は異なる
「(注)穀物地代と貨幣地代の変化が異なることを明らかにするために、10人の労働がある土地に投入され、180クオーターの小麦が得られ、その価値がクオーター当り£4、つまり£720だったとし、追加の10人の労働は、同じ土地又は別の土地に投入され170クオーターしか得られなかったとする。この場合、小麦(の名目価値)は、£4(=960d)から£4 4s 8d(=1016d)に上昇する。つまり、170:180の比率(=180/170=1016/960≑1.058; 1971年以前の英国では、£1=20s=240d; KN注)である。つまり、後者は170クオーターの生産に10人の労働が必要であるが、前者は9.444人[=170/(180/10)]労働でよい。つまり、上昇率は10:9.444(=1.058) すなわち、£4 4s 8s:£4(=1016/960=1.058)である。もし、さらに10人の労働が追加的に投入され、160、150、140が生産されると、価格は、£4 10 0、£4 16 0、£5 2 10 にと増加する。」
* To make this obvious, and to show the degrees in which corn and money rent will vary, let us suppose that the labor of ten men will, on land of a certain quality, obtain 180 quarters of wheat, and its value to be £4 per quarter, or £720; and that the labor of ten additional men will, on the same or any other land, produce only 170 quarters in addition; wheat would rise from £4 to £4 4s. 8d. for 170: 180: :£4: £4 4s. 8d.; or, as in the production of 170 quarters, the labor of 10 men is necessary in one case, and only of 9.44 in the other, the rise would be as 9.44 to 10, or as £4 to £4 4s. 8d. If 10 men be further employed, and the return be
160 the price will rise to £4 10 0
150 the price will rise to £4 16 0
140 the price will rise to £5 2 10
穀物地代と生産物の価格; 生産物の価格は限界地で決定される
「ここで、もし、穀物の価格が£4の時に、180クオーターを生産する土地に地代が支払われないとすると、10クオーターの価値が、次の170クオーターが生産された時に、始めて地代として支払われることになる。つまり、£4 4s. 8d.の時に、£42 6s. 8d.になる。以下、生産量が160の時に、穀物地代 20クオーター、価格 £4 10 0、貨幣地代 £90 0 0; 生産量が150の時に、穀物地代 30クオーター、価格 £4 16 0、貨幣地代 £144 0 0、生産量140の時に、穀物地代 40クオーター、価格 £5 2 10、貨幣地代 £205 13 4 になる。」
Now, if no rent was paid for the land which yielded 180 quarters, when corn was at £4 per quarter, the value of 10 quarters would be paid as rent when only 170 could be produced, which at £4 4s. 8d. would be £42 6s. 8d.
20 quarters when 160 were produced, which at £4 10 0 would be £ 90 0 0
30 quarters when 150 were produced, which at £4 16 0 would be £144 0 0
40 quarters when 140 were produced, which at £5 2 10 would be £205 13 4
貨幣地代は穀物地代より累進的に増加する
「したがって、穀物地代は、100、200、300、400 の比率で増加するのに対して、貨幣地代は、100、 212、 340、 485 の比率で増加することになる。」
Corn rent would increase in the proportion of
100
200
300
400
and money rent in the proportion of
100
212
340
485
(2015.10)