プライベート・エクイティと資本市場(JAI 2018秋)
オルタナティブ投資のフロンティア
オルタナティブ投資ジャーナル2018年秋号(“Journal of Alternative Investments – Fall 2018”)は、「オルタナティブ投資のフロンティア」を特集し、5本の論文を掲載している。プライベート・エクイティ、オプション・トレーディング、アセットクラスとしてのプライベート・クレジット、ボラティリティ、収集物(collectibles)を扱ったもの。
資本市場のイノベーション
資本市場の拡大、発展、成長にともなって新たな投資技法や投資対象が出現している。これは、投資家の要請であるとともに、市場参加者の創意工夫によるものだ。イノベーションはテクノロジーの世界だけでなく、資本市場においても益々盛んである。これがまた資本市場の魅力を増し、成長をうながしているともいえる。
公開企業の数が減る米国:規制コストと規模・範囲の経済
日本とは異なり、米国では公開企業の数が減少している。これは主として投資家保護の観点から公開企業に課される様々な規制により、公開し、維持するコストが高まっていることが大きな要因の1つとなっている。もうひとつの要因は、M&Aによる規模の経済、範囲の経済のメリットであろう。
新たな選択肢 – オルタナティブ投資: 企業、投資家の要請
新々企業にとって、プライベートキャピタルが、コーポレートファイナンスの選択肢として重要性を増している。勿論、プライベートキャピタルにとっても、一般投資家がアクセスできないプライベート市場は、重要な投資対象、オルタナティブ投資として台頭してきているのである。
以下が、同論文の要旨(中湖抄訳)。
プライベート・エクイティの資本市場における役割
「プライベート・エクイティ:新古典派的な資本市場のあり方の再考」(“Private Equity: Rethinking the Neoclassical Axioms of Capital Markets” by Eli Talmor, a professor and founder of the Institute of Private Equity at London Business School in London, U.K. )は、公開市場とプライベート市場の役割について、コーポレートファイナンスの視点から述べている。リスク分散、適正なリスク・リターンの要請から公開市場はこれまで発展してきた。
公開市場の規制コストとエージェンシー・コスト
しかし、これもひとつの壁にぶつかっている。公開企業に課される様々な規制により、公開を維持するためのコストが益々高まっていることがある。また、数多くの株主を持つ会社にとって、悪しきガバナンスや経営者インセンティブといった高いエージェンシーコストの問題も生じている。
公開の代替としてのプライベートエクイティ
プライベート・エクイティが成長している要因の1つはこれらのコストを削減するためである。確かに、公開市場の必要性、重要性は今後も変わらないであろう。しかし、一方で、プライベート市場がより拡大し、機関化されるにしたがって、株式公開の代替としての役割は、経済的な理由から高まるだろう。
2018/10/15