マイナス金利は合理的か? バリュー投資からの一考察
マイナス金利は自然利子率か?
10年国債の利回りがマイナスになった。
バリュー投資の視点から重要なのはこれが競争的に形成された金利なのか、それとも裁量的な金融政策によって人為的に形成されたものなのか?という点である。いいかえれば、マイナス金利は自然利子率なのか、である。
現在は、人口減少少子高齢化もあり、人手不足状態で完全雇用がほぼ達成されている、という前提で考えてみる。
もし、人為的に形成されているのであれば、縮んだバネがいずれは弾けるようにゼロへ、そしてプラスへ転じるであろう。
しかし、もしマイナス金利が競争的に形成されているのであれば、これはISバランスを成立させる金利であり、日銀が10年国債を買おうが買うまいがマイナス圏にとどまるだろう。
バリュー投資の視点
これはバリュー投資の視点からきわめて重要なポイントである。
もし、人為的に形成されているならば、現在の金利に逆相関する株の株価低迷はいずれ修正されることになる。
しかし、競争的に形成されているとすれば、むしろ現在の低迷した株価は実は適正なものであるということになる。
つまり、純資産は、今後どんどん侵食されて半分以下、10分の1以下になる、あるいは淘汰されてしまう、ということになるかもしれない。
ISバランスから考える
ISバランスを成り立たせるマイナス金利か、そうでないか、というのが本質的な問いだ。
マイナス金利は人為的?
I、すなわち投資サイドからみれば、資本の利回りがマイナスで投資する経済主体がはたしているだろうか。労多くして益少なしである。投資はしないであろう、とわたしは考える。
S、すなわち貯蓄サイドからすれば、マイナス金利で貯蓄はしないだろう。つまり、現金で持っていた方がまし、ということになる。貨幣への投機的需要が、可能な限り発生するだろう。
したがって、マイナス金利は、人為的なものでいずれ弾ける、という推定も可能かもしれない。
国内所得減少の予兆
しかし、投資の減少は、ISバランスからは、また貯蓄の減少を意味する。
貯蓄の減少とは消費の増大か、所得の減少によって達成されるだろう。
マイナス金利は人口減少経済の負のスパイラルをあらわしている、とみることも合理的推定となりうることになるかもしれない。
つまり、マイナス金利は競争的に形成されているものであり、自然利子率だ、ということになる。
以上は、国内所得での考察である。
グローバルな視点
グローバルな視点からみたらどうであろうか。
合理的な経済主体であるならば、I、つまり投資機会をグローバル市場に求めるであろう。
また、貯蓄主体もグローバルに目を向けるであろう。
キーポイントは”グローバル”にある、といえるだろうか。
中湖 康太
6/22/19