バリュー投資入門(3) バフェット2017(3)
3. 株式投資に借入金を使わない
このように中長期的にはたっぷりとしたもうけを稼げる可能性が高いといえるバリュー投資ですが、株式市場は短期的には大幅に下落することがあります。それがいつ起こるかを的確に予測することはいかに優れたプロフェッショナルでもほとんど不可能だといって良いのです。
株式市場の暴落をしのぎ、むしろ好機とするには、借入金に依存しないことが重要であるとバフェットは述べています。
「バークシャーのパフォーマンス自体が、価格の短期的なランダムな変動が、長期的なバリューの成長を覆い隠すことを示すことを明らかにしています。過去53年間、バークシャーは収益を再投資し、複利が収益を年々に増殖させる魔術をはたらかせてきました。しかし、バークシャーは4つの深刻な下落を被っています。下表は、それがいかにぞっとするものであったかを示しています。
Period High Low Percentage Decrease
1973/3-1975/1 93 38 -59.1%
1987/10/2-1987/10/27 4,250 2,675 -37.1%
1998/6/19-2000/3/10 80,900 41,300 -48.9%
2008/9/19-2009/3/5 147,000 72,400 -50.7%
Source: Berkshire Hathaway Inc. Annual Report 2017
これが借入金に依存した株式投資に私が反対する理由です。短期的に株価がどれほど下落しうるかを予測することはほとんど不可能です。借入金がいかにわずかであったとしても、またあなたのポジションが株式市場の暴落により直ちに脅威にさらされないととしても、あなたの心はぞっとするようなニュースヘッドラインやコメントに動揺するでしょう。
次の53年間、私たちがそしてあなたの株式がこの表にあるような下落を経験することがあるでしょう。誰もこのような下落がいつ起こるのかを言い当てることはできないのです。信号は黄色を示すことなく、いきなり緑から赤になりうるのです。」
暴落は好機とするには・・・
バフェットは続けます。
「しかし、大暴落は、負債を負っていない者にとっては、素晴らしい機会を提供するのです。それが、キップリングの‘If(もし)’という詩を思い出す時です。
“もし周囲の人たちが動揺しているときに君が冷静さを保てるなら・・・
もし君が待つことができ、待つことに疲れていないなら・・・
もし君が考えることができ、考えること自体が君の目的でないなら(=行動できれば)・・・
もし皆が君を疑っているときに自分自身を信じることができるなら・・・
地球は君のもの、すべてがそこに詰まっている”」
ヘッジファンドと対極にあるレバレッジ(借入金)に対する考え方
バフェットのバリュー投資の借入金、レバレッジの利用に対する考え方は、ヘッジファンドの対極にあると言えるでしょう。
愚鈍にみえることをいとわない
バフェットは投資に当たっては、愚鈍さが重要であり、むしろ愚鈍さに徹することが必要であることを次のように述べています。
「好機をつかむのに偉大な知識、経済学の学位、アルファ、ベータといったウォールストリートの専門用語を知る必要はない。その代わりに投資家が必要なのは、群衆の恐怖心、熱狂を無視し、2、3のファンダメンタル(基礎的なこと)に集中する能力なのです。想像力に欠けるようにみえること、愚鈍にみえることをいとわないことが不可欠なのです。」
レバレッジ(借入金の利用)について、私もバフェットの考え方に賛成です。バリュー投資で成果をあげるには中長期的な視点が不可欠です。そのためには借入金に依存することは得策ではありません。レバレッジを利用したければ、自らではなく、レバレッジを効かせた企業の株式を所有するのです。
オルタナティブ投資の本質
若干横道にそれますが、オルタナティブ投資とは必ずしもヘッジファンドなど非伝統的なスタイルの投資を意味するのではありません。オルタナティブ投資の本質は、投資にあって様々な視点、柔軟な発想で投資を考え、行うことなのです。それはバリュー投資と排反するものではありません。
誰にでもできるバリュー投資
以上のバフェットのバリュー投資のポイントを見れば、株式投資というものがより身近なものになるはずです。株式投資が投機的にみえるのは短期で考えるからです。「市場は短期的には投票機であるが、長期的には計量機である」というベン・グレアムを思い起してください。株式投資は、中長期的には確実なリターンを獲得できる可能性が高いのです。それを可能にするのがバリュー投資です。
実はそれほど危険ではない株式投資・・・問題は「危険」をどうみるか
マイナス金利、ゼロ金利、良くて超低金利の時代です。3%、4%の配当利回りの銘柄がごろごろしている状況です。バフェットは、株式投資はポイントを抑えれば実はそれほど危険ではなく、債券投資の方がよほど危険である、という趣旨のことも述べています。
投資はわからないから専門家に任すのではなく、むしろ自らが取り組むべきなのです。
バフェットは専門家に任すことの落とし穴についても触れています。
以上のような追加的なポイントについても触れていきたいと思います。
2017/7/27
© kota nakako, gcs