地方銀行をどうみるか(SAJ Feb.2019を読む)
証券アナリストジャーナル2019年2月号は特集「地方銀行の経営戦略」を掲載している。
厳しい経営環境下にある地方銀行
地方銀行は厳しい経営環境におかれているとの共通認識がある。その背景には、地方の人口と企業数の減少、企業部門が資金余剰にあること、融資競争の激化、IT革命、さらには日銀のマイナス金利の導入下での利ザヤ縮小がある。
低PBR
東証の低PBRラインキング(2019.4.26時点 出所: Yahoo!ファイナンス)を見ると、上位には地方銀行がずらりと並んでいる。いうまでもなく低PBRとは一株当たりの純資産価値に対して株価が低いこと、低評価であることを表している。トップ10は全て地方銀行であり、PBRは0.11から0.20である。純資産価値に対して10分の1から2にしか評価されていない。
その理由を推定すると
この数字を見ての推定は、①地方銀行が、潜在的な不良債権、または低収益資産を抱えている、②本業自体が低収益であり、今後純資産を棄損していく、将来性のない事業である、あるいは逆に、③市場が過度にペシミスティックになっている、ということである。①、②に立てばとても現在の株価は妥当だろう。③の立場はなかなかとれないだろう、という感がある。
銀行の成長性をみる3つのキーファクター: 企業家精神、フィンテック、グローバル化
わたしは、今後の銀行の成長性を見る上で重要なポイントは、①企業家精神、②フィンテックで優位にたてるか、③ビジネスドメインとしてグローバル市場を持てるか、ではないかと思っている。このうち②、③は規模、範囲の経済と密接に関係にあると思われる。①の企業家精神は、②、③に積極的なスタンスをとれるかである。
銀行はITサービス業
銀行業というのはIT業の一形態という性格を強めていくだろう。
地方か、大統合か
地方銀行は地方経済と密接な関係にあることを強味とするのか、地方銀行が大統合し、規模、範囲の経済を発揮できるようにするのか、岐路にたっているようにも思えるのである。
前者の選択肢でいえば、高田・大木論文の「地域商社化と信託機能の活用」というアイデアは興味深い。
Kota Nakako
5/6/2019