‘経済学古典を歩く Walking Economics Classics’ カテゴリ
リカード「経済学原理」を歩く-107 税金-2
2019-06-04
【コメント】ケインズを思わせるようなリカードの説明である。政府支出が増加し、生産が増加すれば、国民所得は増加するが、生産増がなければ、経済は困窮する。英国政府の過去20年の巨額な支出にもかかわらず、英国の資本は増加し、国民所得は過去最大になっている、と述べる。
(訳)
もし政府支出が追加的な税金により増加すれば、生産の増加か、民間の消費の減少のいずれかにつながるだろうが、税金は収入に課されるので、国の資本は侵食されることはないだろう。しかし、民間の生産の増加又は消費の減少がなければ、税金は資本に対する負荷になるだろう。
(original text)
If the consumption of the government, when increased by the levy of additional taxes, be met either by an increased... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-106 税金-1
2019-06-03
CHAPTER VII. ON TAXES.
第8章 税金
【コメント】リカードが、マクロ経済をISバランスでとらえていることを示している。リカードは税金の説明に先立ち、資本がその耐久性の違いによって固定、流動に分類されること、また、1国の年間の生産が消費より大きいとき資本は増加し、小さいときは資本は減少するときりだす。これは、ISバランスの概念だ。つまり、Y=C+I (Y:国民所得;分配、C:消費、I:投資) -> Y-C=S=I (S:貯蓄); ここで国民所得の均衡における三面等価を考えれば、Y=YS(総供給;生産)=YD(総需要;支出)である。したがって、YS>Cならば投資Iはプラスになり(資本は増加)、YS<Cならば投資Iはマイナス(資本は減少)することになる。
(訳)
税金は1国の土地と労働が生み出したものの1部であり、政府が自由に使えるものだ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-105 外国貿易-28
2019-06-02
【コメント】リカードは、価値不変の媒介物たる貨幣は存在しないとする。紙幣は勿論、金の価値も変動する。交換経済と貨幣経済の違いを明確に意識する。リカードもまたケインズと同様、その理論は異なるにしても、財市場と貨幣市場を区別して扱っている、という点においては同様といえるだろう。ケインズが「一般理論」で、リカード経済学を“スペシャルケース”を扱ったものと批判する一方で、その後世代の後継者と比べて、リカードの論理的秀逸さ、抜け目なさを賞賛するのは、この点にもあるといえるだろう。
次回から第8章税金(Next, we will move on to 'Chapter VIII On Taxes')
(訳)
紙幣130ポンドは、貴金属貨幣130ポンドと同じ価値ではないと妥当な主張をする人がいる。しかし彼らは価値が変わったのは、紙幣ではなく貴金属貨幣であるという。彼らは、減価の意味を、実... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-104 外国貿易-27
2019-06-01
【コメント】リカードは(物々)交換経済と貨幣経済の違いについてふれる。貨幣を介することによって交換経済で成立した相対価値は、必ずしも正確に反映されない、という問題意識がある。また、ここに実務家であり経済学者であるリカードの面目躍如を感じさせる。リカードが貨幣理論を展開する端緒ともなっているといえるだろう。
(訳)
両国において標準となるものと比べて確認できるかもしれない。もし、英国の100ポンドの手形が、フランスやスペインで同じ量の商品を購入でき、ハンブルグの同じ額の手形も同様ならハンブルグと英国の為替は同等である。しかし、もし英国の130ポンドの手形が、ハンブルグの100ポンドの手形しか購入できないなら、英国の為替は30パーセント不利になる。
(original text)
It may also be ascertained by comparing it with som... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-103 外国貿易-26
2019-05-30
【コメント】リカードは、ここで各国の貨幣の相対価値、つまり交換(為替)について述べる。貨幣価値の評価は商品ではなく、各国の貨幣価値で評価して相対価値を推定すべきとしている。これは各国の貨幣の名目価値が必ずしも実質購買力をあらわしているわけではないためと推定される。
(訳)
貨幣の流れが強制的に禁止されるとき、また貨幣が適正な水準に落ち着くのが妨げられると、交換は適正に行われなくなる。それは、紙幣が正貨と交換されることが無い状態で、流通を強制されるようなものである。このような通貨は、必然的に発行された国でしか使うことはできなくなる。乱発されれば、諸国にまき散らされることになる。貨幣は流通されなくなり、為替はその国に不利になる。貴金属の場合と同様に、法律で流通が強制されても、貨幣はその国に滞留し、貿易が他国に逃げるのと同じである。
(original text)
Whenever ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-102 外国貿易-25
2019-05-29
【コメント】リカードは、ある特定の国が製造技術の改良を行うと、同国の商品・製品の交換価値は低下し、同時に、同国に貴金属又は貨幣が流入する、と説明する。このような説明の仕方は今日からすると奇異である。これはリカードが価値の基準を労働においているからで、技術の改良(生産性の向上)が行われると、その商品・製品の交換価値は下がる。しかし、その裏で貨幣(貴金属)が流入する。そして一般物価水準は上昇する。これは貨幣数量説に基づくものと推定される。労働価値を基準にした固定相場制に基づく貴金属の流出入による国際収支の調整とも推定される。
(訳)
鉱山採掘技術の改善により、より少ない労働で貴金属を生産できるようになると、一般的な貨幣価値は下落する。全ての国でより少ない商品としか交換できなくなる。しかし、いずれかの国で製造業が優位になると、その国に貨幣が流入し、貨幣価値は下落する。そして、その国の穀物、... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-101 外国貿易-24
2019-05-28
【コメント】リカードは貨幣価値の減少による一般的な商品価格の上昇と、穀物(あるいは特定の商品)の生産の困難さに伴う価格の上昇を明確に区別する。製造技術の改善は、貨幣価値の下落を引き起こし、一般的な商品価格の上昇となる、としている。機械、技術の改善が、貨幣価値の下落、一般物価の上昇をうながすとしている点は興味深い。
(訳)
これまで、貨幣の低い価値と穀物の高い価値を明確に区別することに注意を払ってきた。これは貨幣と比較される他のいかなる商品との区別についてもあてはまる。これらは一般的に同じことを意味すると見なされてきた。しかし、明らかなことは、穀物が1ブッシェル当たり5シリングから10シリングに上昇した場合、それは貨幣の価値の下落、又は穀物の価値が上昇によるものであろう。人口増加に伴って、より多くの食料を生産するために、継続的により劣位の土地を耕作する必要が生じると、穀物の相対価値は高... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-100 外国貿易-23
2019-05-28
【コメント】リカードは、2国モデルにおいて、生産費の低い国の貨幣価値が、生産費の高い国の貨幣価値よりも低くなる、その商品と交換に追加的に金を得ることになるとしている。これは比較生産費に基づくものと解される。
(訳)
しかし、もしポーランドが製造技術の革新に成功し、一般的な大量生産のコモディティ商品だけでなく、付加価値の高い製品の生産に成功したら、または、他の国が持たない特定の天然資源に恵まれているとしたら、同国が生産する商品と交換に追加的な金を得ることができるようになるだろう。それは、それらの商品だけでなく、小麦、牛、粗布などの価格にも作用する。それらは、鉱山からの距離の不利さを補って余りあることになる。輸出商品のより高い価値により、ポーランドの貨幣価値は、永続的に英国よりも低くなるだろう。逆に、英国がより高い機械技術を持つようになったとする。これまでも、金の価値は、英国においてポー... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-99 外国貿易-22
2019-05-26
【コメント】製造業が発達していない社会の初期の段階では、各国の貨幣価値は、主として貴金属を供給する鉱山からの距離によって規定される。しかし、製造業が発達すると、製造業の優位さが貨幣価値を決定する主要因となる、とする。
(訳)
製造技術が発達しておらず、大量の必需品からなる諸国の生産物に差異がない、社会の初期の段階では、各国の貨幣価値は、主として貴金属を供給する鉱山からの距離によって規定される。しかし、社会の技術、改良が進むと、各国は、それぞれ特定の製造業で秀でるようになる。すると鉱山からの距離は依然としてある程度の影響を持つものの、貴金属の価値は主として、それらの製造業の優位さによって規定されるようになる。
(original text)
In the early states of society, when manufactures have made little pro... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-98 外国貿易-21
2019-05-26
【コメント】名目貨幣価値は、常に変化する。しかし、利益率は2国間で変化しない、実質賃金は全く同じである、とする。
(訳)
貨幣価値は、このように永遠に変化するものであるが、結果として、全ての国に一般的に流通する商品の価格も、著しく異なりうるものである。しかし、貨幣が流入する場合であっても、流出する場合であっても利益率には影響を及ぼさないだろう。資本は、貨幣流通量の増加により増加するだろう。もし、農業者により地主に支払われる地代と労働者へ支払われる賃金が、ある国で他の国よりも20%高く、同時に農業者の資本の名目価値が20%高いとすれば、農業者はその原生産物を20%高くうることになり、利益率は全く同じである。
(original text)
Although, however, money is subject to such perpetual variations, and c... → 続きを読む
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