‘経済学古典を歩く Walking Economics Classics’ カテゴリ
リカード「経済学原理」を歩く-116 生産物への課税-5 課税負担の問題
2019-06-14
【コメント】リカードは、生産物への課税は、消費者が消費に応じて負担し、賃金を引き上げるとこで利益を引き下げる一方、地代、配当、利子にはその課税が及ばないため、不平等である、という議論がでてくるだろうとする。そこで地代、配当、利子への課税の権限が議会によって与えられることになるだろう。自由主義国の気風にふさわしくないものであるにせよ、それによって、すべての所得に課税され、人々が詮索しあう不快なことは少なくなるかもしれない、と述べる。しかし、実際には地主は穀物地代の減少をこうむり、また、配当も利益の減少の影響を受けるわけであり、ここに地代、配当の二重課税の問題が生ずるだろう。課税負担の分配は悩ましい問題である。
生産物への税金は、消費者への影響の限りにおいては、平等な税といえるかもしれない。しかし、利益への影響については不公平といえるだろう。地主、資本家には作用するものではないからである。地... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-115 生産物への課税-4 利益への影響
2019-06-13
【コメント】リカードは、生産物への課税により、それに応じて賃金が上昇し、利益は減少する、と述べる。課税により生産物の価格は上昇し、諸商品の価格も、構成要素となる生産物の割合に応じて上昇する。しかし、生存可能最低賃金は、それ以上下がることはできないし、食料、必需品に転嫁された課税分上昇する。それは利益を侵食することになる。①課税による消費者価格の上昇、②賃金の上昇、という2つの作用により総余剰が減少し(①)、分配(①、②)が影響を受ける。
穀物への税金は、その消費者がこうむることになる。穀物の価格は、その税金の割合分、その他の商品に比べて高くなる。他の商品の要素に含まれる生産物の比率に比例して、それを打ちけす何か他の要因がなければ、その価格が高くなる。商品は間接的に課税されることになり、それらの価格は、その税金の割合だけ高くなる。
A tax on corn, then, woul... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-114 生産物への課税-3 穀物地代に影響
2019-06-12
【コメント】リカードは生産物への課税により、貨幣地代は変化しないが、穀物地代は減少すると数値例により説明する。前段で述べたように、土地の貨幣地代と穀物地代は、同じ比率では変化しないためである。地主への実質価値での分配を減少させることになる。
(訳)
生産物への課税、地租、また10分の1税の場合においても、土地の貨幣地代は同じのままだが、穀物地代は変化するだろう。
先に仮定したように、耕作中の土地に3つの等級があり、同量の資本が投入された場合、以下のような生産量が得られるとする。
土地の等級 穀物生産量(クォ―ター)
第1 180
第2 170
第3 160
第1等級の土地の地代は20クォーター(第3等級と第1等級の差)となる。第2等級の土地の地代は10クォーター(第3等級と第2等級の差)となる。第3等級の土地に... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-113 生産物への課税-2 (補足)
2019-06-10
【コメント】(補足)
一言つけ加えるべきは、実質的に消費者が負担するといっても、生産者の粗利益は、実質的な生産者価格の減少と需要量の減少により、減少するだろうということである。
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リカード「経済学原理」を歩く-113 生産物への課税-2
2019-06-09
【コメント】リカードは、生産物への課税は、実質的には消費者によって負担されることになる、また、地代、賃金に転嫁することもできない、とする。生産者の供給曲線が限界費用曲線であることは、課税されようが課税されまいが変わらない。つまり、生産物への課税分だけ供給曲線は上方にシフトする。需要曲線が変化しないとすれば、市場価格は上昇し、需要量(したがって供給量)が減少することになる。課税分は、消費者余剰の中から支払われることになる。くりかえしになるが、納税主体が生産者であるにしても、実質的な負担者は消費者であり、市場の効率性はそこなわれる(総余剰が減少する)。リカードの議論には抜け目がない。
(訳)
もし、生産物の価格が生産者の税金を補うだけ上昇しなかったなら、利益が一般的な水準よりも低くなるところで取引、生産を止めるになるだろう。そして、おとろえない需要により、生産物価格が上昇... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-112 生産物への課税-1
2019-06-08
CHAPTER VIII.
TAXES ON RAW PRODUCE.
第9章 生産物への課税
【コメント】まず、生産物の価格は、生産にかかる限界的な費用(それが土地にかかるものであれ、資本にかかるものであれ)で決定されることを説明する。生産物はコモディティーなので、完全競争市場の均衡条件「価格=限界費用」があてはまる。リカードはミクロ経済学の大原則を述べているわけだ。そして、生産者に課される税金は、いかなる種類のものであれ、生産費の上昇を意味し、価格を引き上げると述べる。
(訳)
本書の前半で述べたように、穀物の価格は、地代を支払わない(限界的な)土地、またはその土地に投入される資本にかかる限界的な生産費によって決まるという原則を説明した。したがって、生産費のいかなる上昇も価格を引き上げることになるし、いかなる減少も価格を引き下げる。より質の悪い土地を耕作する必要性、また... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-111 税金-6
2019-06-07
【コメント】リカードは、資産税は、資本の効率的な配分を妨げるとして、セイを引用し課税に反対する。一方、資産税は徴収が簡素なことがせめてもの償い、との意見があると述べている。
(訳)
しかし、資産移転への課税に反対する理由はこれだけではない。それは社会にとって最も適切な資本の配分を妨げる。社会一般の発展のために、すべての資産の譲渡や交換を妨げるべきではない。あらゆる資本が、それを最も有効に活用できる人の手にわたるようになるからだ。セイは言う。「ある人はなぜその土地を売りたいと思うようになるのだろうか。それは、彼が売却した資金をより有効に活用できる機会があるからだ。また、他のある人はなぜこの土地を購入しようとするのか。それは、資本がほとんど、または全く利用されていないため、有効活用することができると考えるからだ。この交換によって、これらの人々の所得を増加させることで、一般的な所得が増加す... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-110 税金-5
2019-06-06
【コメント】リカードはアダム・スミスを引用して説明する。税金を価格メカニズムを妨害する要因としてみなしている、といってよいだろう。
(訳)
アダム・スミスは言う。「死者から生存者への資産の移転に課される税金は、最終的に、資産が移転される人、つまり生存者に課されることになる。土地の売却に対する税金は、全て売手に課される。売手は、ほとんどの場合、売却の必要に迫られて売ることになるので、これを価格としてとらえる。買い手は、通常は、買う必然性はなく、支払いたい価格を払うだけである。彼は、税金と価格を合わせて取得コストと考える。税金が多くなればなるほど、支払う価格は低くなる。このような税金は、避けられない必要性のある人に課されることになる。したがって、それは残酷で強制的なものになる。」「印紙税と、債券の登録や、借入契約に対する税金は、すべて借り手に課され、実際に支払われる。裁判手続きに課... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-109 税金-4
2019-06-05
【コメント】リカードは、税金が資本に課されることになれば、その国の将来の生産の減少につながるため、それは絶対に回避すべきであるとする。ISバランスで考えれば、投資を損なわないように、貯蓄が維持されるべきということになる。税金分の支出は、投資ではなく、消費を減少させることが望ましい、というわけだ。そうすれば、民間のかわりに政府が支出し、総需要は減少することなく、また、資本は損なわれないということになる。
(訳)
人生における地位と最盛期の富を維持したいというすべての人が持つ願望は、税金の誘因となる、といえる。税は、資本に課されるものであれ、所得に課されるものであれ、所得から払われることになる。したがって、課税が発生し、政府が支出を増やすと、比例して資本と所得が増加しなければ、人々の年間の支出は減少することになるだろう。人々にこうした傾向を奨励することは政府の政策であるべきだろう。そして... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-108 税金-3
2019-06-05
【コメント】リカードは税金は資本と生産に悪影響を与える、と述べる。
この背景には、農業の拡大による人口の増加、ドック、運河の建設など海運業、製造業の隆盛、その他の大型の事業があることを指摘できるだろう。それらは、資本と生産の増加に繋がっている。
For the proof of this we might refer to the increase of population—to the extension of agriculture—to the increase of shipping and manufactures—to the building of docks—to the opening of numerous canals, as well as to many other expensive undertakings; all denoting an inc... → 続きを読む
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