‘経済学古典を歩く Walking Economics Classics’ カテゴリ
リカード「経済学原理」を歩く-126 生産物への課税-15 外国貿易のメリット
2019-06-27
【コメント】リカードは、外国貿易が行われれば、国内の生産物価格上昇の影響を受けることはなくなるとし、ここでも外国貿易のメリットを説く。ただし、リカードが「海外の自然価格と国内の自然価格の比較による」と自然価格と述べていることに注意が必要だ。つまり、リカードは市場の完全性(完全競争市場)、裁定が完全にはたらくことを前提に議論を展開している、と推定される。
(訳)
しかし、貨幣価値が増大した場合、それは国内だけでなく外国の商品に対しても上昇するのではないか、したがって、外国商品を輸入するすべての誘因がなくなるのではないか、との反論もでるだろう。外国で100ポンドする商品を輸入し、国内で120ポンドで売っていたとする。貨幣の価値が英国で上昇し、国内で100ポンドでしか売れないとなったら、輸入はやめるべきであろうということになる。しかし、そのようなことは決して起こらないだろう。商品を輸入する動... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-125 生産物への課税-14 貨幣の取引需要を維持するテクニック
2019-06-25
【コメント】ここは貨幣数量説に基づくややテクニカルな内容である。ここで「貨幣」といっているのは、金や銀などの貴金属、ないし貴金属で鋳造された貨幣のことだろう。生産物への課税によって商品価格が上昇する。輸出によって国内の取引需要を満たす貨幣量を維持する、と解してよいだろう。
(訳)
生産物への課税の影響は、その生産物が投入されたすべての商品の価格を引き上げることであろう。しかし、税の比率に応じてということにはならない。一方、その生産物が投入されていない、金属から作られた物品から作られた他の商品は、以前と同量の貨幣ですべての取引を行うことを可能とするため価格が下落するだろう。
すべての国内生産物の価格を上げる効果をもつ税は、ほんの限られた期間を除けば、輸出を妨げることにはならないだろう。もし、国内の価格が上昇すれば、すぐに輸出されてもうけられることにはならないだろう。その税金は貨幣価値... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-124 生産物への課税-13 紙幣の増刷は解決策にはならない
2019-06-25
【コメント】リカードは、金本位制下の貨幣数量説にもとづいて課税による生産物価格の上昇の影響を考察し、金の流入がなければ、同量の取引量を回転(取引)させることができなくなる、という問題を述べる。紙幣を増発しても、それは貨幣価値の減少を生ぜしめるので本質的な問題を解決することにはならない、と解してよいだろう。
(訳)
第4の、そして最後の触れるべき反対は、生産物の価格を上げることによって、その生産物が投入されるすべての商品の価格が上昇することであり、一般市場において海外の製造業者と平等に競争することができなくなることである。
まず第一に、穀物と全ての国産商品が、貴金属の流入なくしては上昇しえないことである。というのは、価格が高くなると、同量のマネーでは低い価格の時と同じように、同量の商品の取引を回転させることはできないからだ。そして、貴金属は高くなった商品で購入することはできない。多く... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-123 生産物への課税-12 正解のない問題
2019-06-23
【コメント】リカードは、「課税は正解のない問題(a choice of evils)」という。つまり、唯一無二の最適解がある問題ではなく、生産活動を妨げることがなく、各階級がおおむね妥当といえる公平公正な方法を見出していく現実的な問題である、ということであろう。そして、「平等とはいえないが富裕者階級が負担せざるを得ず・・」とも述べている。
(訳)
課税はいかなる形式であっても、正解のない問題(a choice of evils)である。それが利益に課されないのであれば、支出に課される。等しく負担され、再生産を妨げなければ、課税対象がなんであれ違いは生じない。生産、ストックの利益への税金は、直接に利益に課されようが、間接的に土地やその生産物に課されようが、他の税金に比べて、いかなる階級の人もそれを逃れることができないという長所がある。それぞれが、その収入、資力にしたがって貢献するわけであ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-122 生産物への課税-11 価格上昇と労働者
2019-06-20
【コメント】リカードが生産物への課税が労働者を苦境におちいれるだろうことを示す。また、リカードは商品価格が下落しても資本の蓄積の妨げにはならない、と述べていることは注目に値する。リカードは、インフレよりもむしろデフレの方が好ましい、と考えていたふしがある。なぜなら、商品価格の上昇に対して賃金は速やかには上昇せず、その結果、労働者の状況は悪化する。インフレがデフレよりも好ましいとする今日の経済思潮は再考されるべきかもしれない。人口減少下の労働者不足、完全雇用状態ではインフレは生活水準を悪化させる可能性がある。
(訳)
穀物への課税は必ずしも穀物の生産量を減らさず、単に貨幣価格を引き上げるだけだとするなら、必ずしも労働供給に対して需要を減らすわけではないということになる。それでは、労働者に供給される量を減らすべきということにならないのだろうか。労働者へ供給される量が減る、言いかえると、労働... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-121 生産物への課税-10 労働供給論
2019-06-20
【コメント】リカードは、サプライサイドに着目する。生産物供給が価格に対して弾力的であるのに対して、労働供給が価格に関して非弾力的であるとする。したがって労働の価格(実質賃金)は生産物の価格に比べて大きな変化をする。これは極めて興味深い点である。リカードは実質賃金が収縮的であると見なしている。また、リカードは、労働供給量の変化を人口の増減とほぼ同じく見ている。リカードはマルサスの労働供給論(人口論)を採用している。リカード経済学が長期の市場均衡理論である、とする見方につながるものであろう。
(訳)
貨幣の価値の下落も、生産物への税金も、それぞれ価格を引き上げるが、生産物の量や、それを購入、消費する人口に必ずしも影響を与えるわけではない。一国の資本が不規則に増加するときに、賃金が上昇する一方、穀物価格はそのままであったり、またはその上昇率が低かったりする。また、一国の資本が減少するとき、賃... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-120 生産物への課税-9 貨幣数量説
2019-06-18
【コメント】リカードは、ここで貨幣数量説に立って説明している。貨幣供給量の増大により貨幣賃金は上昇するが、労働者は以前と同じ必需品の量しか購入できない。貨幣はたんなる媒介に過ぎず、実物経済の相対価値には影響を与えない、とする。
(訳)
鉱山からの貴金属の流入、または銀行権限の乱用による貨幣価値の下落は、食料価格上昇のもういとつの原因である。それは生産量を変化させるわけではない。労働者の数にも、労働への需要にも影響を与えない。というのも資本の増加も減少も起こらないからだ。労働者に分配・供給される必需品の量は、労働の需給による必需品への相対的な需給に依存している。貨幣は量が表わされるたんなるミーディアム(媒介)にすぎない。労働、必需品の需給が変わることはない。労働者への実質的な報酬は変わらない。貨幣賃金は上昇するが、労働者は以前と同じ必需品の量しか購入できない。この原則に反... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-119 生産物への課税-8 穀物価格と賃金
2019-06-18
【コメント】リカードは、穀物価格が実需にもとづき、賃金の上昇の後に生ずれば労働者の困窮は生じないとする。そして穀物価格を差額地代論、つまり限界費用原理に基づいて説明する。
(訳)
高い穀物価格が需要増によるものであるときは、いつも賃金高に続いて生じるものだ。というのも需要は、人々の生活の糧として、それを欲し、購入することが増えなければ増加することはないからだ。資本の増加は、当然として労働の雇用者間の競争を増やし、その結果、賃金は上昇する。賃金の上昇は、直ぐに食料に支出されるわけではなく、第一に、労働者の他の楽しみのために支出される。しかし、改善された状況は、結婚をうながし、その家庭を養うための食料への需要の増加に結びつく。そして、当然の成り行きとして、食料への支出が、当初、賃金が支出された他の楽しみをしのぐことになる。穀物の上昇は、需要増によるものだ。なぜなら社会... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-118 生産物への課税-7 最低賃金規制の無効性
2019-06-16
【コメント】リカードは、食料価格によって名目賃金を規制する貧民者救助法(poor laws)は、労働者の救済にはつながらず、食料価格をさらに引き上げるだけだとする。追加的な食料の輸入以外には、いかなる法律も救済にはならない、と主張する。
(訳)
不作により必需品の価格は上昇する。高い価格は、それによって消費を供給に一致させる唯一の方法である。もし、すべての穀物の購入者が豊かなら、価格はいくらでも上昇するだろう。しかし、結果は変わることはない。価格の高騰によって、貧困者は通常の消費を削減することを強いられる。そして、需要は供給の限界にまで引き下げられることになる。このような状況においては、食料価格によって名目賃金を規制する政策ほど馬鹿らしいものはないが、貧民者救助法の間違えた適用によって、このようなことがしばしば行われているのである。このような方法は労働者に本当の救済を与... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-117 生産物への課税-6 賃金への影響
2019-06-15
【コメント】リカードは、生産物への課税に対する、第二の反対、不服について述べる。食料、必需品価格の上昇の要因には様々なものがあり、影響の仕方も状況によって異なり、それらを区別して考察することが必要だとする。
(訳)
第二の反対、不服については、穀物価格の上昇と賃金の上昇の間には、かなりの時間があるから、その間に、下層階級の人々が非常に厳しい悲惨な状況におかれるだろうということである。これについて、わたしは次のように答えるだろう。賃金の生産物の価格への反応のしかたは、状況によって異なり、あまりはっきりしないだろう。穀物価格の上昇は賃金には全く影響与えない場合もあるし、賃金の上昇が穀物価格の上昇に先立って生じる場合もある。また、その影響が非常にゆっくりに表われる場合もあれば、直ちに表われることもあるだろう。
必需品の価格が賃金を規律すると主張する人々は、いつも社会における... → 続きを読む
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