‘経済学古典を歩く Walking Economics Classics’ カテゴリ
リカード「経済学原理」を歩く-145 土地税(Land Tax)-11 土地税は生産を阻害する
2019-08-12
【コメント】リカードは、土地に課されるいかなる税も、生産を阻害しないことはない、とする。政府を逆なでさせないためか、曲りくどい言い回しになっている。
(訳)
もし土地にいかなる税金もかけられず、他の方法により徴収されたなら、農業は、これまで以上に繁栄したであろう。なぜなら、土地に課せられる税金は、いかなるものも農業を促進することにはならないからだ。穏やかな課税は、多分おおきな足かせにはならないだろう。しかし、それが生産を促進することにはならない。英国政府は、セイ氏が想定したような見解はもたなかった。農業階級の将来の税金を免除すること、国家が必要とする供給を他の階級から得るとはしなかった。政府は、ただ次のように言うだけだ。「土地にこれ以上の負担をかけることはないだろう。しかし、政府は他の方法によって、国家の緊急時に、分担すべき全ての税を徴収する権利を有している」と。
実物税、あるいは... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-144 土地税(Land Tax)-10 消費者に転嫁される
2019-08-06
【コメント】リカードは、土地に課せられる税は、実質的には消費者に転嫁される、とさらに述べる。
(訳)
もしセイ氏の意見が取り入れら、農業者の収入の十分の一が税として徴収されるとしたら、農業者の利益にかかる部分的な税となり、その他の資本の利益にはかからないだろう。税金は生産の多寡にかかわらず全ての土地にかかることになる。そして、いくつかの土地においては地代が支払われないために、税を地代で補うことができないだろう。利益に対する部分的な税は、そのもととなる取引にはかからない。業者は取引をやめるか、または、税を自分で補うことになる。地代を払わない生産者は、生産物価格の上昇分報われる。このように、セイ氏の提案に従えば、税の実質的な負担は、地主や農業者にかかるのではなく消費者にかかることになる。
もし、セイ氏が提案する税が、土地から得られる総生産物量または価値の増大に比例して増加すると、それは... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-143 土地税(Land Tax)-9 セイの誤り
2019-07-28
【コメント】リカードは、土地税を含めて税について、一貫して否定的な見方をしている、といえるだろう。セイの英国の土地税に対する肯定的な見方についても、誤った見方であるとしている。
(訳)
もし税金が、賃借人によって、初めに、地主でなく消費者へ転嫁され、その後、変化がなければ、生産物の価格は、その税金分上昇すし、その後は変化しないだろう。もし、それが、平等に課されないと、第1の格言には反しないが、第4の格言には反することになる。それは、特定の階層にかたよって課されるのではないにしても、国庫にもたらす以上に、より多くを人々のふところから奪うことになるだろう。セイ氏が次のように言うとき、氏は、英国の土地税の性質と効果について誤った見方をしているように思える。「多くの人は、英国の農業の大いなる繁栄は、この固定した評価によるものだとしているが、それは疑いようがないところだ。個々の取引と資本にかか... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-142 土地税(Land Tax)-8 テナントの前払
2019-07-25
【コメント】税についてのリカードの叙述は退屈であるが、リカードは自らの経済学を分配論としてとらえており、税の負担の問題は重要なテーマである。ここで、経済学特有の視点が提供されている。つまり、税を納めることと、実施的な負担は、必ずしも一致していないということである。地主は、表面的には土地税を支払うが、実質的な負担者ではない。
(訳)
アダム・スミスは言う。「土地税は、英国のそれと同じように、ある不変の規律によって、それぞれの地域で評価されている。しかし、最初に制定されたときは、同等だったとしても、時の経過とともに、州内の異なる地域における耕作についての改善や怠慢の度合いの違いによって、必然的に同等ではなくなる。イングランドにおいては、ウィリアム4世とメアリーによって、異なる州や教区の土地税が決められたが、当初においても、評価は同等ではなかった。したがって、土地税は、4つの格言の第一に反... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-141 土地税(Land Tax)-7 避けがたい不利益
2019-07-23
【コメント】リカードは、いかなる税金であれ、それは生産を阻害しないことはない、とする。但し、幸いにも資本の形成を著しく害するほどの課税する自由主義国はない、とも述べる。税金は必要悪、という見方といってよいだろう。
(訳)
十分の一税と土地とその生産物にかかる税金は、耕作、生産を阻害することになるだろう。いかなるものであれ、一般に需要される商品の交換価値の上昇は、耕作と生産を阻害する傾向がある。しかし、これは課税に不可分の悪しき問題であり、ここで扱っている特定の税金にだけあてはまるものではない。
国家による課税のすべてにあてはまる、避けることができない不利益と見なすことができる。すべての新しい税金は、生産へのあらたな負担であり、自然価格を引き上げる。以前にはその税の負担者が自由に使うことができた一国の労働の一部は、国家のものとなる。この部分が非常に多額になり、通常は十分な余剰生産物に... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-140 土地税(Land Tax)-6 資本ストックが負担
2019-07-23
【コメント】続けて、リカードは土地税の解釈に関して、アダム・スミスと異なる見解を述べる。つまり、土地税は、実質的には消費者に課されるのであるが、労働者はその資金不足のゆえに、一部は資本ストック、つまり利益に課されることになる、地代に課されるものではない、とする。
(訳)
スミス氏のこの主題に関する見解は、次のような説明にあらわれている。「十分の一税とその他のすべてのこの種の土地税は、一見、完全に平等に見えるが、実は、まったく不平等な税であり、異なる状況に応じて、地代として支払われる生産物の相当部分にかかるものである。」しかし、わたしは、このような税金は、農業者、または地主の各層が異なる重さで負担する不平等な税ではない、ということをこれまで説明してきた。なぜなら、彼らは生産物の価格の上昇によって償われているからで、生産物の消費者として、その相当分の税負担をしているに過ぎないからである。賃... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-139 土地税(Land Tax)-5 アダム・スミスの誤り
2019-07-19
【コメント】リカードは、土地、地代、生産物に課される税について、すべて実質的に地主が負担しているとするアダム・スミスの見解が誤りであることを指摘する。リカードは、まず、一般的に地代とわれているものについて、土地の用役に支払われるものと、資本の用役に支払われるものとを区別する。そして、土地税、生産物に課される税は、価格の上昇によって実質的に消費者によって負担されるとする。
(訳)
アダム・スミスは、地代について得意な見方をしている。各国で多くの資本が費やされているにもかかわらず、土地にかかるすべての税は、地代が払われない土地であれ、土地税として土地自体にかかるものであれ、十分の一税であれ、土地の生産物への税であれ、農業者の利益に課されるものであれ、すべて地主によって支払われる、としている。また、一般的に税は、名目的には賃借人により支払われるとしても、地主が実質的に負担しているとする。ア... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-138 土地税(Land Tax)-4 土地税の問題点
2019-07-18
【コメント】リカードは土地税の問題点を次のように指摘する。土地税は、最下級の土地を基準として穀物価格を引き上げ、土地の等級による生産力の違いに応じて課されるわけではない。そのため、それよりも上級の土地の地主は、結果として、その価格の上昇による恩恵を受けることになる。
(訳)
すべての耕作される土地に、等級の区別に関係なく均等に課される土地税は、耕作される最下級の土地の耕作者が支払う税の比率にしたがって穀物価格を引き上げる。同じ資本量が投下された土地の生産物の産出量は、その等級によって著しく異なる。もし、与えられた資本で1000クウォーターの穀物を生産する土地で、100ポンドの税金が課されると、穀物価格は、農業者の税金分の負担を補うためクウォーター当り2シリング(KN注: クウォーター当り税0.1ポンド=2シリング; 旧通貨単位)上昇する。しかし、同じ資本でより等級の高い土地で;200... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-137 土地税(Land Tax)-3 アダム・スミスの4つの格言
2019-07-17
【コメント】リカードは土地税は、アダム・スミスが述べる、税に関する4つの格言に反している、とする。4つの格言とは、①能力に応じたもの、②恣意的でないこと、③簡素であること、④できるだけ少額であること、である。
(訳)
今述べた土地税は、非常に不平等な税であり、アダム・スミスによれば、すべての税が従うべき、税に関する一般的な4つの格言に反している。4つの格言は、以下の通りである。
1. すべての国の主体は、それぞれの能力に応じて、できる限り政府に貢献すべきである。
2. 各個人が払うべき税は、確かなものであり、恣意的なものであってはならない。
3. すべての税は、その時に、納税者にとって、最も都合の良い方法で課されるべきである。
4. すべての税は、それが国庫に入る以上に、人々の懐から容易に持ち出され、支払いやすいようにできるだけ少額になるように工夫されるべきである。
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リカード「経済学原理」を歩く-136 土地税(Land Tax)-1 地主には地代税しか転嫁できない
2019-07-16
【コメント】リカードは、すべての土地に課される土地税を地主に転嫁することはできないとする。なぜなら、限界地においては地代は発生せず、もし、課税されるならば、生産物の価格が税相当分上昇しなければ、資本はその土地から引き上げられて耕作されなくなるからである。
第12章 土地税
CHAPTER XII. LAND-TAX.
(訳)
地代とその変動に比例して課される税金は、実質的には地代に課される税である。土地税は、地代が生じない土地には課せられず、また、地代が発生しない土地に利益を得る目的で投下された資本の生産物にも課されることはない。すべて地主に課せられ、地主が負担することになる税金である。いかなる点においても、このような税は地代への税金と異なることはない。しかし、もし、土地税がすべての耕作された土地に課されるのであれば、いかにその税が穏やかなものであっても、それは生産物への課税とい... → 続きを読む
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