‘経済・投資 Money’ カテゴリ

SAJバックナンバー読む: スチュワードシップ(3月) 監査報告書の拡張(4月) 金融政策の正常化(5月)

2018-09-17
証券アナリストジャーナル(SAJ)のバックナンバー特集(Mar., Apr., May.2018)を簡単に見ておきたい。 2018年3月号「特集:スチュワードシップ・コード改訂と機関投資家」 エージェンシー問題解決策としてのスチュワードシップ・コード 日本版スチュワードシップ・コードは、2014年に、政府の成長戦略の一環として策定され、17年5月に改訂された。企業への資金の出し手である機関投資家に、その委託者である投資家に対する責任を意識させ、企業との建設的な対話を通じて企業の持続的成長を促すことで、委託者(投資家)のの中長期的リターンを向上させることを目指している、というものである。つまり、機関投資家のスチュワードシップコードは、本来投資家であれば行っているであろう企業への働きかけ、行動をエージェントたる機関投資家にうながすものである。それはエージェンシー問題の解決策としての性格を...
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「資産運用業界の新潮流」SAJ SEP.2018: オルタナティブ投資の重要性

2018-09-15
オルタナティブ投資の権威マーク・アンソンの基調講演 基調講演のマーク・アンソンはオルタナティブ投資分野の理論家、研究者にして実務家として著名。現在は米コモンファンド(Commonfunds)の最高投資責任者。 同氏は、現職の前はカルパース(CalPER=The California Public Employees' Retirement System: カリフォルニア州職員退職年金基金)、ブリティッシュテレコム企業年金(BTPS: British Telecom Pension Scheme)の最高投資責任者等を歴任した。 歩きながら読んだアンソンの名著 ”Handbook of Alternative Assets” (オルタナティブ資産ハンドブック) 私もかつて米系投資銀行の株式調査部から投資銀行部門に移った際、実務のかたわら同氏の名著”Handbook of Alterna...
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バリュー投資入門(8)バフェット2017(8)

2018-08-21
8.  バークシャーのマイノリティ投資 最後にバークシャーの上場株式へのマイノリティ投資についてのバフェットの言葉です。マイノリティ投資というのは、支配権を持たない形の投資、通常は持分で20%未満の投資です。バフェット/バークシャーがどういう方針、発想で株式投資を行っているか、一般投資家には最も関心の深いところであると言えます。(青字がバフェットの言葉の中湖抄訳) 株価は長期的には企業の本源的価値を反映する=>バリュー投資の信念 ポイントは、次の3つです。第一に、バークシャーは保有する株式を事業への持分と見ているということ。要は、短期的な売買を目的に保有するのではなく事業主の視点で投資しているということです。 第二に、バークシャーは留保利益の積み上がりを配当とキャピタルゲインで得ていくということ。この背後には株価が長期的には留保利益の積み上がりを反映する、応じて上昇するという信念、...
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バリュー投資入門(7)バフェット2017(7)

2018-08-21
7.  バークシャーの損害保険事業 今回は、バフェットによるバークシャーの損害保険事業の説明です。バークシャーがなぜ、損害保険事業に参入したのか、何にポイントを置いて運営しているのか、がよくわかります。 バフェットが重視する3つのポイント ポイントは、次の3点であると思います。まず、第一にバフェットは保険事業を市場性有価証券への投資(これはオルタナティブ投資的な発想といえるでしょう)と見ていること、第二に、資産の流動性(これをバフェットはフロート“float”と呼んでいます)を重視していること、第3に、バフェット自身がよく理解している事業である、ということです。 流動性、換金性に優れた上場株式 これらの点は、読者の皆さんの投資にあたって参考にして欲しい点であり、私も重視している点です。特に、日本では株式投資を危険なもの、場合によってはギャンブルに近いという見方をする人が多いように...
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バリュー投資入門(6)バフェット2017(6)

2018-08-07
6.  バークシャーの買収活動 (下) それではバークシャーの2017年の買収活動について見ていきましょう。バフェット/バークシャーがどのような企業を好んでいるか、どのような方針で買収しているかの具体的なイメージがつかめます。(ブルーはバフェットの言葉の中湖抄訳) SUMMING UP:  バフェットの買収の特徴 簡単にまとめるとバフェット/バークシャーの買収の特徴をあげると次の5つになるでしょう。 1.業界トップ、又はトップとなりうる事業 2.多くは地味で堅実、自らが理解できる事業 (例外は3.の存在) 3.信頼できる経営陣  4.内部成長・外部成長により着実かつ持続的な利益成長が見込める事業 5.妥当な価格 バフェットは恐らく派手であっても(例えばIT企業)、価格が妥当で、信頼おける経営陣が存在すれば買収を検討するでしょう。しかし、そういった企業はほとんどの場合、5の...
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バリュー投資入門(5)バフェット2017(5)

2018-08-02
5.  バークシャーの買収活動 (上) バフェットはバークシャーの事業、買収活動とその方針について説明しています(ブルーはバフェットの説明の要約。中湖訳) バークシャー事業の4つの構成要素 バークシャーの価値を高める構成要素は4つある。(1)大型の独立した個別事業の買収、(2)既存事業の競争力を高める追加的買収、(3)既存事業の内部成長(売上増、利益率改善)、(4)バークシャーの巨額の株式、債券ポートフォリオからの投資収益。 買収検討の5つのキーファクター 新規の個別事業の買収にあたってのキーファクターは、①持続性のある競争優位性、②能力があり質の高い経営陣、③事業を運営するにあたっての純(有形)資産に対する高いリターン、④魅力ある内部成長の機会、そして⑤妥当な買収価格、である。 株価高騰で買収の機会が減少 2017年に検討した買収の全てにおいて⑤のファクターが障壁となった。...
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バリュー投資入門(4)バフェット2017(4)

2018-07-29
4.  運用成績は良かったり悪かったりする。しかし手数料は必ず徴収される  バフェットは、「運用成績は良かったり悪かったりする。しかし運用手数料は必ず徴収される」(“Perfomance comes, performance goes. Fees never falter.”)と述べ、多くの専門家が運用するファンドのインセンティブ(成果)報酬の問題について述べています。 バフェットの賭け  そして、バフェットが実際に行った2007年12月9日から10年の「賭け」(‘The Bet’)の結果を発表しています。「賭け」とは、バフェットが選択したほとんどコストのかからないS&P500のインデックスファンドが、多くの評判の良い、成果報酬型の「助っ人」である投資専門家によって運営されるファンドに比べてより良い結果を残すだろう、というものです。  バフェットは$318,250を10年間...
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バリュー投資入門(3) バフェット2017(3)

2018-07-27
3.  株式投資に借入金を使わない  このように中長期的にはたっぷりとしたもうけを稼げる可能性が高いといえるバリュー投資ですが、株式市場は短期的には大幅に下落することがあります。それがいつ起こるかを的確に予測することはいかに優れたプロフェッショナルでもほとんど不可能だといって良いのです。  株式市場の暴落をしのぎ、むしろ好機とするには、借入金に依存しないことが重要であるとバフェットは述べています。  「バークシャーのパフォーマンス自体が、価格の短期的なランダムな変動が、長期的なバリューの成長を覆い隠すことを示すことを明らかにしています。過去53年間、バークシャーは収益を再投資し、複利が収益を年々に増殖させる魔術をはたらかせてきました。しかし、バークシャーは4つの深刻な下落を被っています。下表は、それがいかにぞっとするものであったかを示しています。 Period           ...
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バリュー投資入門(2) バフェット2017(2)

2018-07-25
2.  株式への投資を事業への投資と考える  バフェットのバリュー投資において最も重視する投資指標が一株当たり簿価BVPSとその成長性、株価との関係であることを前回説明しました。企業の本来の、あるいは潜在的なファンダメンタル・バリュー(本源的価値)が株価に照らして過小評価されていると判断でき、その判断に相当程度な確信が持てるときに投資を決定するわけです。 チャート・パターンでは投資しない  これに関連してバフェットの投資哲学の根本をなすのが、株式への投資をキャピタルゲインや配当取りを目的としたマネタリーな行動ではなく、事業への投資として考える、ということです。  バフェットは次のように株主への手紙で言っています。  「チャーリー[1] と私はバークシャーが所有する普通株式を、チャート・パターンやアナリストの目標株価、メディアに登場する評論家の意見によって売買されるチッカーシンボル...
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バリュー投資入門(1) バフェット2017(1)

2018-07-25
バリュー投資の本家 ウォーレン・バフェット  バリュー投資といえばウォーレン・バフェットの名前が思い浮かびます。バフェットの投資活動の中心は、自らが会長兼CEOを務め、筆頭株主でもある持株会社兼投資ファンドのバークシャー・ハサウェイです。その株式はニューヨーク証券取引所に上場されています。バフェットはそのアニュアルレポートの「バークシャー・ハサウェイの株主へ」(“To the Shareholders of Berkshire Hathaway Inc." 以下、株主への手紙)で、事業と投資活動を説明し、その背後にある考え方を明らかにしています。  バフェットのバリュー投資の神髄に触れるには、やはりバフェット自身の言葉でつづられた株主への手紙を読むことが欠かせないと思います。  直近の2017年の株主への手紙(2018/2/24)から3つのポイントを述べたいと思います。 1. 過去...
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