‘経済・投資 Money’ カテゴリ

バリュー投資入門(9) バフェット2008(1)総括1

2018-10-01
2008年の金融危機をバフェットがどうみたか 2008年の金融危機(日本でいう「リーマンショック」)の年のバフェットの株主への手紙を見てみたい。金融危機にあたって当時バフェットがどのように経済、金融資本市場、事業、投資を見ていたのか知ることは有意義である。今回は2008年手紙(2009年2月27日付け)の序論。 過去44年で最悪の年 バークシャーの純資産は2008年に115億ドル縮小し、一株当たり簿価は9.6%減少した。1965年からの過去44年間、バークシャーの簿価にとっても、S&P500指数にとっても2008年は最悪の年であったといってよい。時間が経過するにつれ、世界の金融市場で息の根を止めるような問題が明らかになってくるだろう。 政府の大規模介入は不可避。その後のインフレ懸念 米国とその他世界は、悪循環に陥り、恐怖がビジネスの縮小を招き、それがさらにより大きな恐怖を...
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中国株式指数先物市場の非効率性とアブノーマルリターン: JAI 2018夏(7)

2018-09-28
非効率的市場からアブノーマルリターンを得る: 中国株式指数先物市場の検証(“Do Implicit Phenomena Matter? Evidence from China Stock Index Futures”) by Min-Yuh Day, Paoyu Huang, Yensen Ni, and Yuhsin Chen 中国株式指数先物市場の非効率性 中国株式指数先物市場における非効率性を検証している。本論文の研究者は、CSI300先物指数は5分間連続して上昇または下落することを観察している。投資家はこのような上昇、下落が生じたときに利益を上げているのであろうか。 マニピュレーションとアブノーマルリターン この現象は、CSI300指数の上昇または下落に先立って生じていることを明らかにしている。これを利用すればアブノーマルリターンを獲得することが可能になるだろう。同研究者は...
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テクニカル分析は超過リターンを獲得しうるか: アイスランドの実証: JAI 2018 夏号(6)

2018-09-26
リターンの予測可能性と効率的市場仮説: アイスランドからの実証(“Return Predictability and Efficient Market Hypothesis: Evidence from Iceland”) by Massoud Metghalchi, Massomeh Hajilee, and Linda Hayes) 効率的な先進国株式市場 市場の効率性はファイナンス理論の基礎となっているものであり、アセットマネジメント業界に重大なインプリケーションを持っている。米国、英国、日本、フランス、ドイツなど先進国の主要な株式市場は効率的であり、恒常的にアブノーマル・リターンを得ることはできないとされている。 OMXアイスランド総株式指数を用いた実証分析 同論文は、テクニカル分析が予測能力をもっているかをOMXアイスランド総株式指数を用いて実証研究を行ったもの。 予測...
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オプション市場が示唆する株式銘柄選択: JAI 2018夏号(5)

2018-09-25
オプション市場が示唆する株式銘柄選択(“Option Informed Stock Picking” by Edward Szado, Hossein Kazemi, and Thomas Schneeweis, from 'The Journal of Alternative Investment'(JAI) SUMMER 2018   オプションが株価を予知する 多くのリサーチがオプション市場での効率的な取引が、次におこる株価の変化についての効果的なシグナルとなることを示している。 効果的なロング・ショート戦略とロングオンリー戦略 同論文は、オプション市場のシグナルに基づく株式のロング・ショート戦略について分析したもの。さらに、ボラティリティ・リスク・プレミアム、オプション・株式取引高比率、インプライド・ボラティリティの歪み(skew)、実現されたボランティアなどのシグナルに基...
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アクティブポートフォリオのヘッジと構築: JAI 2018夏号(4)

2018-09-25
「アクティブ戦略ポートフォリオのヘッジと構築:戦略の時間軸と推定誤差」(“Hedging and Constructing Portfolios of Active Strategies: Strategy Time Horizon and Estimation Errors” by Alexander Rudin and William Marr) ポートフォリオ運用における資産間の相関関係、誤差推定の重要性とその限界 ポートフォリオマネジメントにおいて、資産間の相関関係を予測推定することは最も重要な事項のひとつである。同論文は、ヒストリカルデータを用いた資産間の相関関係の推定とその誤差推定、その限界、それがポートフォリオ運用に与える影響を検証したものである。 特に、ダイナミックなアクティブ運用の際に、ヒストリカルデータは、それに必要な信頼ある推定値を実務家に提供できるだろうか。 ...
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ヘッジファンド悪玉論再考: JAI 2018夏号読む(3)

2018-09-23
ヘッジファンド悪玉論について(“Reconsidering Hedge Fund Contagion” Richard Sias, H.J. Turtle, and Blerina Zykaj) 第三の論文は、2007-2008年の金融危機(日本では通称「リーマンショック」と呼ばれる)と2007年のクウォンツ危機時におけるヘッジファンドの影響を検証したもの。 金融危機時に必ず出るヘッジファンド悪玉論 問題が起こったときにわかりにくいもののせいにしたがるのは人間の常といってよいだろう。株式市場、金融市場も例外ではない、というより一般人にはなじみがない故に、その傾向はより顕著である。 2007年クウォンツ危機と2008年金融危機(リーマンショック) 2007年のクウォンツ危機時にでたのが、高度の数学的手法を用いてコンピューターによる取引を行うクウォンツ悪玉論である。2007-08年の...
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ファクター投資とヘッジファンド: JAI 2018夏号(2)

2018-09-22
2. "Are Hedge Funds on the Other Side of the Low-Volatility Trade?" by David Blitz ヘッジファンドと低ボラティリティ・アノマリーの関係について ファクター投資と市場の効率性 近年注目を浴びているファクター投資に関する研究。ファクター投資がアノマリーを生じ、その逆サイドの取引を行う裁定取引の制約を受けないヘッジファンドに超過リターンを提供しうるのではないか、という問いが生ずる。ファクター投資と市場の効率性に関する研究といってもよいだろう。 ファクター投資の逆サイド ファクター投資家は、当該ファクターに関連した証券からなるポートフォリオを保有する。必然的に非ファクター投資家はその反対のポジションを取ることになるだろう。例えば、レバレッジ(借入金)を使えないがゆえに、高ベータ、高ボラティリティのポートフ...
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仮想通貨だけでないブロックチェーン: JAI 2018夏号(1)

2018-09-19
本号(The Journal of Alternative Investments, Summer 2018)には、7本の論文が掲載されている。1本がブロックチェーンに関するもの、3本がヘッジファンドに関するもの、3本が超過リターンを生み出す分析、予測、市場の非効率性などを扱っている。今回は、ブロックチェーンに関するものについて見てみたい。 1. ブロックチェーン:データモール、コイン・エコノミー、キーレスペイメント(“Blockchain: Data Malls, Coin Economies, and Keyless Payments” by Zura Kakushadze and Ronald P. Russo) 仮想通貨だけでないブロックチェーン・テクノロジー ブロックチェーンは、仮想通貨に関わるテクノロジーととらえられているが、本論文では、データモール(特定のデータ市場)、...
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SAJバックナンバー読む: 企業成長とマクロ成長(6月) 無形資産投資(7月) 金融ジェロントロジー(8月)

2018-09-17
引き続き証券アナリストジャーナル(SAJ)のバックナンバー特集を簡単に見ておきたい。 2018年6月号「特集:企業成長とマクロ成長」 企業の利益成長とマクロ経済の成長の関係について、イノベーションと労働市場、M&A、設備投資、利益成長と投資・消費への影響など様々な視点から検討している。 人材の流動性とクロスボーダーM&A この中で特に、①人材の流動性がイノベーションの促進につながる、②クロスボーダーM&Aの重要性、という指摘に注目したい。 ダイバーシティ(diversity; 多様性)の重要性 ダイバーシティ(多様性)がイノベーションに繋がることが生物学的にも知られている。生物多様性というものだ。同質の人間ばかりいると組織、発想が硬直化する。わたしがかつて勤めていた米系投資銀行でもダイバーシティ(“diversity”)ということを非常に重視していた。それが全社...
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SAJバックナンバー読む: スチュワードシップ(3月) 監査報告書の拡張(4月) 金融政策の正常化(5月)

2018-09-17
証券アナリストジャーナル(SAJ)のバックナンバー特集(Mar., Apr., May.2018)を簡単に見ておきたい。 2018年3月号「特集:スチュワードシップ・コード改訂と機関投資家」 エージェンシー問題解決策としてのスチュワードシップ・コード 日本版スチュワードシップ・コードは、2014年に、政府の成長戦略の一環として策定され、17年5月に改訂された。企業への資金の出し手である機関投資家に、その委託者である投資家に対する責任を意識させ、企業との建設的な対話を通じて企業の持続的成長を促すことで、委託者(投資家)のの中長期的リターンを向上させることを目指している、というものである。つまり、機関投資家のスチュワードシップコードは、本来投資家であれば行っているであろう企業への働きかけ、行動をエージェントたる機関投資家にうながすものである。それはエージェンシー問題の解決策としての性格を...
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新NISA時代の投資のヒント 投資・経済短歌&コラム: バフェットとケインズの投資法etc.


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