‘経済・投資 Money’ カテゴリ

先端的金融IT(SAJ May.2019を読む)

2019-05-08
証券アナリストジャーナル2019年5月号に特集「先端的金融IT技術の応用」が掲載されている。 SAJでは、先端的金融IT技術の定義について触れていないが、フィンテック(Fintech)に含まれるものと考えて良いだろう。 興味深い4点 本特集で興味深かったことは以下の4点である。 1.個人向けの投資アドバイスで、「富裕層は人のサービスを好む」傾向がある、と述べられていること。 2.定性情報の定量化技術により、ESG格付けの予測など、投資家向けのサービスとして提供される可能性があること。 3.呼び値の刻みの水準が、取引市場間の競争に影響を与えること。 4.人間の定性判断の定量モデル化が試みられていること。 それぞれについてコメントしよう。 ITが進化するほど、重要になる人間によるサポート 1.については、現在の富裕者層はシニア世代であり、ITリタラシーが低いことも関係してい...
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地球温暖化と株式市場(SAJ Apr. 2019を読む)

2019-05-07
証券アナリストジャーナル2019年4月号に特集「地球温暖化と株式市場」が掲載されている。 ESG投資 これは基本的にESG(Environment, Social and Governance)投資と企業戦略の問題と考えてよいだろう。 地球温暖化問題は、基本的には外部経済(不経済)の問題なので、その対応はなかなか難しいもの、との認識がまず必要だ。 ただし、昨今の異常気象で、企業、投資家、消費者を含め多くの人が、その弊害を感じとる状況にあるともいえる。 外部経済(不経済)の内部化 多くの人々が弊害を身近に感じられる状況にある以上、外部経済(不経済)の内部化、つまり、外部性が市場メカニズム、資本市場に取り込まれる契機が生じているともいえる。 ESG投資が叫ばれるようになったのはまさにその象徴ともいえる。 3者間のポジティブフィードバック 最終的には、消費者、企業、投資家の3者...
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マルチファクターモデルとバリュエーション(SAJ Mar. 2019を読む)

2019-05-07
証券アナリストジャーナル2019年3月号に特集「マルチファクターモデルとバリュエーション」が掲載されている。 シンプルで直観にうったえるものが良い マルチファクターモデルは、簡単にいえば、株式や債券などのリターンを複数のファクター(要因)で説明する統計的モデルである 機関投資家、M&Aアドバイザリー、ファイナンス研究者の視点からいくつかの論文が掲載されている。 個人的には、モデルはあまり複雑すぎると実用性が乏しくなると思っている。シンプルで直観にうったえるものが良い。 実際、M&Aを中心とした企業価値評価の世界では、シングルファクターモデルのCAPM(資本資産価格モデル)が主流であるという。 重要なのは説明変数の予測 ただし、シングルファクターにしても、マルチファクターにしても、現実には過去のデータから推計されたベータなどの係数が用いられることである。実際には...
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地方銀行をどうみるか(SAJ Feb.2019を読む)

2019-05-06
証券アナリストジャーナル2019年2月号は特集「地方銀行の経営戦略」を掲載している。 厳しい経営環境下にある地方銀行 地方銀行は厳しい経営環境におかれているとの共通認識がある。その背景には、地方の人口と企業数の減少、企業部門が資金余剰にあること、融資競争の激化、IT革命、さらには日銀のマイナス金利の導入下での利ザヤ縮小がある。 低PBR 東証の低PBRラインキング(2019.4.26時点 出所: Yahoo!ファイナンス)を見ると、上位には地方銀行がずらりと並んでいる。いうまでもなく低PBRとは一株当たりの純資産価値に対して株価が低いこと、低評価であることを表している。トップ10は全て地方銀行であり、PBRは0.11から0.20である。純資産価値に対して10分の1から2にしか評価されていない。 その理由を推定すると この数字を見ての推定は、①地方銀行が、潜在的な不良債権、または...
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リサーチのアンバンドリング(SAJ Jan.2019を読む)

2019-05-04
リサーチのアンバンドリングについて 証券アナリストジャーナル(SAJ) (Jan. 2019)特集「MiFID II 導入後の状況と展望」の中で、リサーチのアンバンドリングのことが述べられている。 欧州のMiFID II MiFID(Markets in Financial Instruments Directive)というのはの欧州で導入された金融市場と金融サービスに関する新たな規制である。適用開始から約1年になる。特に興味深いのはリサーチ・サービスのアンバンドリング(分離)である。 フィーの削減の動き 基本的にはセルサイドのブローカレッジ手数料の削減、および必要な、優れたリサーチだけにフィーを払う動きであるといって良いだろう。 バイサイドからすれば、運用パフォーマンスをよくするために不必要なフィー(手数料)は削減したいだろう。売買執行のブローカレッジサービスを提供するセルサ...
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悲観不要の日本の人口減少 Don’t worry about population decline in Japan

2019-04-12
人口減少は合理的 日本の人口が昨年、前年比0.21%減少して1億2644万人になったと伝えられた。日本の人口減少については悲観論が多い。それは主として、経済成長、社会保障費負担、年金財政の問題から指摘されることが多いと思う。 わたしは、日本の人口減少は経済合理性にかなった現象であり、悲観すべきではないと思っている。 日本のGDP=日本株ではない まず、第一に、投資家として述べておきたいのは、日本の人口減少、GDPの伸び悩みがすなわち、日本株がダメだという理由にはならないことである。日本の企業の海外売上比率は6割近くなっている。つまり、日本経済イコール日本株ではない。 国土に比して人口が多い日本 第二に、日本の人口減少は、労働市場の競争メカニズムが適正に機能していることによって生じているということである。日本は国土に比して人口が多い。例えばドイツとイギリスと比べてみる。日本の国土...
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金融とAI: ロバート・マートンの言葉 Words of Robert Merton

2019-04-10
人間にしかできないこと 証券アナリストジャーナル2019年3月号に、「金融イノベーションと金融サイエンス」(ロバート・マートン、本多俊毅)という興味深い特別論文が掲載されている。 ロバート・マートンは、デリバティブ商品の価格決定理論でノーベル経済学賞を受賞した優れた実践的経済学者である。 昨今のように、超低金利で、株価パフォーマンスがさえない市場環境において、デリバティブ商品は欠かせない投資の選択肢となっている。このような市場環境で、特に、証券価格の変動、ボラティリティにリターンが生じうる、投資対象となる、ということは投資家にとっての恩恵だ。勿論、それは必ず儲けられるということと同義ではない。ハイリスク=ハイリターン型の商品ではある。 マートンはAIについてどう考えているのか。次の言葉がわたしのこころをつかんだ。 『・・・AIが全てを解決してくれるわけではない。・・・投資の世界に...
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リカード「経済学原理」を歩く-88 外国貿易-11

2019-04-10
【コメント】リカードが歴史に名を留めることになった比較優位説の古典的叙述。 (訳) [注14]  機械技術が非常に進んでおり、近隣諸国よりも少ない労働で商品を生産できる国は、その国土がより肥沃で、穀物をその輸入先の国よりも少ない労働で生産できたとしても、その商品と交換に、穀物の一部を輸入するだろう。二人の人が靴と帽子を作ることができ、一人が両方で他の人よりも上手だったとする。しかし、帽子を作ることについては、一人は競争相手よりも1/5、つまり20%だけ上回っており、靴を作ることについては1/3、つまり33%上回っていたとする。この場合、その人が靴を作り、劣った人が帽子を作ることに特化した方が両者の利益にかなうのではないだろうか。 [14] It will appear then, that a country possessing very considerable ad...
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経済短歌 比較優位の理由 Reason for Comparative Advantage

2019-04-06
リカードが 比較優位の 説明に 資本不自由を 説くは奇異なり Curious is Ricardo's explanation of Comparative Advantage due to the difficulty of movement of capital. リカードの 比較優位の 真因は 労働移動 不自由なるべし True reason for Comparative Advantage should be more the difficulty of movement of labour than that of capital, in my view. Reading and 'walking' Ricardo's 'Principles', I felt it curious despite his placing importance on labour as ...
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リカード「経済学原理」を歩く-87 外国貿易-10

2019-04-05
【コメント】有名なポルトガルと英国のワインと布の生産費(労働投入量)を使った比較生産費説(比較優位説)の説明。2国間、2商品生産モデル。  ポルトガルの生産費(労働投入量)がワイン80、布90、英国の生産費がワインが120、布が100とする。この場合、ポルトガルがワインを、英国が布を生産して交換(貿易)することが双方の利益になる。  ポルトガルはワイン、布の2商品の生産費で絶対優位にある。一方、ポルトガルはワイン、英国は布の生産費で比較優位にある。  但し、リカードが資本移動の困難さを理由に多国間での比較優位説を説明しているのは、妥当ではないいのではないか。リカードが労働価値説をとっていることからも本質的には、労働の移動の困難さによるものであろう。それともリカードに何かの意図があったのか。 (訳) ポルトガルでワインを生産するには年間80人の労働が必要で...
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