‘経済・投資 Money’ カテゴリ
リカード「経済学原理」を歩く-94 外国貿易-17
2019-05-21
【コメント】英国とポルトガルの2国間で、布とワインの貿易を行うインセンティブが無くなる稀有な('singular')ケースについて述べる。
(訳)
ポルトガルの状況は全く変わらない。しかし、英国においてはより生産的になったワインの製造に労働を投入する。すると両国の物々交換貿易の状況は直ちに変わることになる。ポルトガルからのワインの輸出が止まるだけでなく、新しい貴金属の配分が生じ、布の輸入が無くなる。
(original text)
No change whatever takes place in the circumstances of Portugal; but England finds that she can employ her labour more productively in the manufacture of wine, and instantly th... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-93 外国貿易-16
2019-05-20
【コメント】2国間の貿易において、(生産費の変化によって)ある商品の価格差が縮小し、手形割引料(プレミアム)考慮後の利益が無くなると貿易のインセンティブはなくなる。
(訳)
この英国の手形のプレミアムが輸入布の利益と等しくなれば、勿論、輸入は止まる。しかし、もし手形のプレミアムが2%だったとすると、英国の負債100ポンドを返済するために、ポルトガルにおいては102ポンドを支払うべきとなる。一方、45ポンドの費用がかかった布を50ポンドで売るとすると、布は輸出され、手形が購入される。そして、貨幣が輸出され、ポーランドにおける貨幣が減少し、英国における貨幣が増加する。このような取引は、それが利益を生まない状況になるまで続くのである。
(original text)
If then this premium for a bill on England should be equal ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-92 外国貿易-15
2019-05-18
【コメント】外国貿易における手形取引について述べる。物々交換の場合には、貨幣や金銀が2国間でやりとりされることはない。しかし、貿易収支不均衡の場合には、金銀が輸出されることになる。
(訳)
もし、市場がポルトガルから英国にワインを輸出することに良い状況にあれば、ワインの輸出業者は、手形の売手である。その手形は、布の輸入者やその他の買い手によって購入される。そして、このようにいずれの国からも、貨幣が手渡される必要はない。それぞれの国で輸出業者がその商品に対して支払われる。お互いに直接の取引なしに、ポルトガルの布の輸入業者によって支払われた貨幣は、ポルトガルの輸出業者に支払われる。英国においても、同じ手形のやりとりで、布の輸出業者は、ワインの輸入業者からその対価を得る。
しかし、ワインの価格が、英国に輸出できるものでなくなった場合にも、布の輸入業者は手形を購入する。しかし、手形の価格は... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-91 外国貿易-14
2019-05-15
【コメント】リカードは、物々交換経済と貨幣経済の違いに着目する。ただし、マーチャントにとっては、実質相対価格が変化したとしても手形により負債が決済されればよいとする。
(訳)
英国でのワイン生産の改良の前に、英国でのワイン価格が1樽50ポンドで、ある量の布が45ポンドだったとする。また、ポルトガルでの同量のワインが45ポンド、同量の布が50ポンドだったとする。ワインはポルトガルから輸出されると利益は5ポンドになる。布は英国から輸出され同じ利益になる。
改良の後に、英国でワインは45ポンドに下落し、布は同じ価格だったとする。市場での全ての取引は、個々に独立とする。商人は英国で布を45ポンドで購入し、ポルトガルで通常の利益を得るため、英国から輸入し続ける。彼は、英国の布を購入し、ポルトガル貨幣の為替手形で支払う。彼にとって、重要なのは、負債をこの手形で弁済することだ。この取引は、彼がこ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-90 外国貿易-13
2019-05-14
【コメント】リカードは比較優位、比較生産費説は厳密には、純粋交換経済、つまり物々交換経済において成り立つと述べていると解することができる。リカードの抜け目なさである。
(訳)
金銀は、一般に取引を媒介する通貨として選ばれている。そして、その配分は、競争市場において、このような金属が存在せず、世界中の諸国の、また国家間の取引が、純粋に物々交換であった場合の取引量に相応している。
つまり、布は、輸入元である英国での生産コストに対して、より多くの金と交換されるのでなければポルトガルには輸入されない。また、ワインは、ポルトガルでの生産コストに対して、より高く売られるのでなければ英国に輸入されない、もし純粋な物々交換の貿易を想定すれば、所与の労働で、英国が布を生産して、より多くのワインを得られる間は、貿易は続くことになる。ポルトガルの産業についてはこの逆(ワインを生産し、より多くの布が得る)... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-89 外国貿易-12
2019-05-13
【コメント】リカードは、比較優位の説明にあたって資本、労働の国際間の移動が起こりにくい粘着的(sticky)な状況を想定している。今日、資本の移動はおおむね自由になったといってよい。ただし、労働は言語、カルチャー、生活習慣の違い等があり、依然としてより粘着的であるといってよいだろう。
(訳)
このような状況では、まちがいなく英国の資本家、また両国の消費者にとっては、ワインと布の両方をポルトガルで作ることが有利となるだろう。つまり、布を作っている英国の資本と労働はポルトガルへ移動すべきということになる。その場合も、これらの商品の相対価格は、同じ原則に支配されている。例えば、一方はヨークシャーの生産物であり、他はロンドンの生産物であるというのと同じだ。より高い収益率をもとめて資本が様々な商品の生産に配分されれば、利益率は同一になる。そして、商品の実質価格つまり労働で測った... → 続きを読む
トークンとICOs (JAI Spring 20219)
2019-05-12
オルタナティブ投資ジャーナル 2019年春号 ("The Journal of Alternative Investments" SPRING 2019)は、トークン(Tokens)とICOs(Initial Coin Offerings)を特集している。
トークン(Tokens)とICOs(Initial Coin Offerings)
ブロックチェーン・テクノロジーの重要なアプリケーションとしてのトークンとICOsが、スタートアップ企業の資金調達方法として登場し、ベンチャーキャピタルにとっても、より分散されたスタートアップ企業のポートフォリオを持つことが可能になった、という見方ができるとしている。
ブロックチェーンがキャピタルマーケットをどう変えるのか
同誌は、次のような見解を述べている。ブロックチェーンが今後、キャピタルマーケットをどう変えていくのか。目くばせが必要だろう。
... → 続きを読む
ビッグデータと金融の未来 (SAJ Dec.2018読む)
2019-05-11
証券アナリストジャーナルのバックナンバー2018年12月号に特集「ビッグデータと金融の未来」が掲載されている。
2つの意味
ビッグデータと金融というとき、その意味は、大きく次の2つに分けられるだろう。
第1は、巨大IT企業がユーザーの特性を大量に集積、分析し、それをマーケティングなどに利用することによって、あらゆる領域でドミナントなポジションし、収益を拡大する、それによって株式価値、企業価値が巨大化する、ということ。
第2は、ビッグデータを用いてデータと株式や債券などの証券価格との関連を明らかにし、それをトレーディングに活用する、というものである。
巨大IT企業とネットワーク経済
ITの世界はネットワークエコノミーがはたらき、ドミナントな企業が益々ドミナントになっていく。これは経済学の言葉を用いれば、収穫逓増がはたらくためで、生産量を拡大すればするほど限界費用、したがって平均費... → 続きを読む
アナリストの新たな分析視点-非財務情報 (SAJ Nov.2018読む)
2019-05-11
証券アナリストジャーナルのバックナンバー2018年11月号に特集「アナリストの新たな分析視点-非財務情報の活用法」が掲載されている。
見えざる資産
背景には、2014年のスチュワードシップ・コード、2015年にコーポレートガバナンス・コードを政府の「日本再興戦略」にみられるように、無形資産など、企業の見えざる資産を重視することが重要であるという時代の認識があるだろう。
アナリストに求められるものは変わっていない
ITの進化により、単純な財務情報や定性的・定量的な情報はコモディティー化しているということがある。アナリストに求められるものは、数字の奥にある、目には見えない企業価値の創造・増大の源泉を見極める力、ということになる。
ある意味では、優れたアナリストに求められるこのような分析力は今も昔も変わっていないといえるだろう。
優れたアナリストはシャーロック・ホームズ
座談会で、... → 続きを読む
PE投資(SAJ バックナンバーOct. 2018を読む)
2019-05-09
証券アナリストジャーナルのバックナンバー2018年10月号に特集「プライベートエクイティ(PE)投資-日本における課題整理と解決に向けて-」が掲載されている。
機関投資家が注目するPE投資
PE投資を主として機関投資家の視点から考えるという内容である。
PEを、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を代表に、日本の機関投資家が投資対象としてとらえるようになってきたことは喜ばしいことだと思う。
パフォーマンスの向上と分散投資
PE投資が世界の運用資産残高の約5%に達し、日本の機関投資家も、バフォーマンスの向上、分散投資の視点から重要な投資対象として無視できなくなっている状況にいたっているということであろう。
プライベートエクイティ(PE)の本質
しかし、プライベートエクイティ(PE)というものがそもそもどういう発想ででてきたかを考えることが重要だ。
PEとはその名が示す通... → 続きを読む
« 以前の記事 新しい記事 »