‘経済・投資 Money’ カテゴリ
マイナス金利は合理的か? バリュー投資からの一考察
2019-06-22
マイナス金利は自然利子率か?
10年国債の利回りがマイナスになった。
バリュー投資の視点から重要なのはこれが競争的に形成された金利なのか、それとも裁量的な金融政策によって人為的に形成されたものなのか?という点である。いいかえれば、マイナス金利は自然利子率なのか、である。
現在は、人口減少少子高齢化もあり、人手不足状態で完全雇用がほぼ達成されている、という前提で考えてみる。
もし、人為的に形成されているのであれば、縮んだバネがいずれは弾けるようにゼロへ、そしてプラスへ転じるであろう。
しかし、もしマイナス金利が競争的に形成されているのであれば、これはISバランスを成立させる金利であり、日銀が10年国債を買おうが買うまいがマイナス圏にとどまるだろう。
バリュー投資の視点
これはバリュー投資の視点からきわめて重要なポイントである。
もし、人為的に形成されているならば、現在の金利に... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-122 生産物への課税-11 価格上昇と労働者
2019-06-20
【コメント】リカードが生産物への課税が労働者を苦境におちいれるだろうことを示す。また、リカードは商品価格が下落しても資本の蓄積の妨げにはならない、と述べていることは注目に値する。リカードは、インフレよりもむしろデフレの方が好ましい、と考えていたふしがある。なぜなら、商品価格の上昇に対して賃金は速やかには上昇せず、その結果、労働者の状況は悪化する。インフレがデフレよりも好ましいとする今日の経済思潮は再考されるべきかもしれない。人口減少下の労働者不足、完全雇用状態ではインフレは生活水準を悪化させる可能性がある。
(訳)
穀物への課税は必ずしも穀物の生産量を減らさず、単に貨幣価格を引き上げるだけだとするなら、必ずしも労働供給に対して需要を減らすわけではないということになる。それでは、労働者に供給される量を減らすべきということにならないのだろうか。労働者へ供給される量が減る、言いかえると、労働... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-121 生産物への課税-10 労働供給論
2019-06-20
【コメント】リカードは、サプライサイドに着目する。生産物供給が価格に対して弾力的であるのに対して、労働供給が価格に関して非弾力的であるとする。したがって労働の価格(実質賃金)は生産物の価格に比べて大きな変化をする。これは極めて興味深い点である。リカードは実質賃金が収縮的であると見なしている。また、リカードは、労働供給量の変化を人口の増減とほぼ同じく見ている。リカードはマルサスの労働供給論(人口論)を採用している。リカード経済学が長期の市場均衡理論である、とする見方につながるものであろう。
(訳)
貨幣の価値の下落も、生産物への税金も、それぞれ価格を引き上げるが、生産物の量や、それを購入、消費する人口に必ずしも影響を与えるわけではない。一国の資本が不規則に増加するときに、賃金が上昇する一方、穀物価格はそのままであったり、またはその上昇率が低かったりする。また、一国の資本が減少するとき、賃... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-120 生産物への課税-9 貨幣数量説
2019-06-18
【コメント】リカードは、ここで貨幣数量説に立って説明している。貨幣供給量の増大により貨幣賃金は上昇するが、労働者は以前と同じ必需品の量しか購入できない。貨幣はたんなる媒介に過ぎず、実物経済の相対価値には影響を与えない、とする。
(訳)
鉱山からの貴金属の流入、または銀行権限の乱用による貨幣価値の下落は、食料価格上昇のもういとつの原因である。それは生産量を変化させるわけではない。労働者の数にも、労働への需要にも影響を与えない。というのも資本の増加も減少も起こらないからだ。労働者に分配・供給される必需品の量は、労働の需給による必需品への相対的な需給に依存している。貨幣は量が表わされるたんなるミーディアム(媒介)にすぎない。労働、必需品の需給が変わることはない。労働者への実質的な報酬は変わらない。貨幣賃金は上昇するが、労働者は以前と同じ必需品の量しか購入できない。この原則に反... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-119 生産物への課税-8 穀物価格と賃金
2019-06-18
【コメント】リカードは、穀物価格が実需にもとづき、賃金の上昇の後に生ずれば労働者の困窮は生じないとする。そして穀物価格を差額地代論、つまり限界費用原理に基づいて説明する。
(訳)
高い穀物価格が需要増によるものであるときは、いつも賃金高に続いて生じるものだ。というのも需要は、人々の生活の糧として、それを欲し、購入することが増えなければ増加することはないからだ。資本の増加は、当然として労働の雇用者間の競争を増やし、その結果、賃金は上昇する。賃金の上昇は、直ぐに食料に支出されるわけではなく、第一に、労働者の他の楽しみのために支出される。しかし、改善された状況は、結婚をうながし、その家庭を養うための食料への需要の増加に結びつく。そして、当然の成り行きとして、食料への支出が、当初、賃金が支出された他の楽しみをしのぐことになる。穀物の上昇は、需要増によるものだ。なぜなら社会... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-118 生産物への課税-7 最低賃金規制の無効性
2019-06-16
【コメント】リカードは、食料価格によって名目賃金を規制する貧民者救助法(poor laws)は、労働者の救済にはつながらず、食料価格をさらに引き上げるだけだとする。追加的な食料の輸入以外には、いかなる法律も救済にはならない、と主張する。
(訳)
不作により必需品の価格は上昇する。高い価格は、それによって消費を供給に一致させる唯一の方法である。もし、すべての穀物の購入者が豊かなら、価格はいくらでも上昇するだろう。しかし、結果は変わることはない。価格の高騰によって、貧困者は通常の消費を削減することを強いられる。そして、需要は供給の限界にまで引き下げられることになる。このような状況においては、食料価格によって名目賃金を規制する政策ほど馬鹿らしいものはないが、貧民者救助法の間違えた適用によって、このようなことがしばしば行われているのである。このような方法は労働者に本当の救済を与... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-117 生産物への課税-6 賃金への影響
2019-06-15
【コメント】リカードは、生産物への課税に対する、第二の反対、不服について述べる。食料、必需品価格の上昇の要因には様々なものがあり、影響の仕方も状況によって異なり、それらを区別して考察することが必要だとする。
(訳)
第二の反対、不服については、穀物価格の上昇と賃金の上昇の間には、かなりの時間があるから、その間に、下層階級の人々が非常に厳しい悲惨な状況におかれるだろうということである。これについて、わたしは次のように答えるだろう。賃金の生産物の価格への反応のしかたは、状況によって異なり、あまりはっきりしないだろう。穀物価格の上昇は賃金には全く影響与えない場合もあるし、賃金の上昇が穀物価格の上昇に先立って生じる場合もある。また、その影響が非常にゆっくりに表われる場合もあれば、直ちに表われることもあるだろう。
必需品の価格が賃金を規律すると主張する人々は、いつも社会における... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-116 生産物への課税-5 課税負担の問題
2019-06-14
【コメント】リカードは、生産物への課税は、消費者が消費に応じて負担し、賃金を引き上げるとこで利益を引き下げる一方、地代、配当、利子にはその課税が及ばないため、不平等である、という議論がでてくるだろうとする。そこで地代、配当、利子への課税の権限が議会によって与えられることになるだろう。自由主義国の気風にふさわしくないものであるにせよ、それによって、すべての所得に課税され、人々が詮索しあう不快なことは少なくなるかもしれない、と述べる。しかし、実際には地主は穀物地代の減少をこうむり、また、配当も利益の減少の影響を受けるわけであり、ここに地代、配当の二重課税の問題が生ずるだろう。課税負担の分配は悩ましい問題である。
生産物への税金は、消費者への影響の限りにおいては、平等な税といえるかもしれない。しかし、利益への影響については不公平といえるだろう。地主、資本家には作用するものではないからである。地... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-115 生産物への課税-4 利益への影響
2019-06-13
【コメント】リカードは、生産物への課税により、それに応じて賃金が上昇し、利益は減少する、と述べる。課税により生産物の価格は上昇し、諸商品の価格も、構成要素となる生産物の割合に応じて上昇する。しかし、生存可能最低賃金は、それ以上下がることはできないし、食料、必需品に転嫁された課税分上昇する。それは利益を侵食することになる。①課税による消費者価格の上昇、②賃金の上昇、という2つの作用により総余剰が減少し(①)、分配(①、②)が影響を受ける。
穀物への税金は、その消費者がこうむることになる。穀物の価格は、その税金の割合分、その他の商品に比べて高くなる。他の商品の要素に含まれる生産物の比率に比例して、それを打ちけす何か他の要因がなければ、その価格が高くなる。商品は間接的に課税されることになり、それらの価格は、その税金の割合だけ高くなる。
A tax on corn, then, woul... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-114 生産物への課税-3 穀物地代に影響
2019-06-12
【コメント】リカードは生産物への課税により、貨幣地代は変化しないが、穀物地代は減少すると数値例により説明する。前段で述べたように、土地の貨幣地代と穀物地代は、同じ比率では変化しないためである。地主への実質価値での分配を減少させることになる。
(訳)
生産物への課税、地租、また10分の1税の場合においても、土地の貨幣地代は同じのままだが、穀物地代は変化するだろう。
先に仮定したように、耕作中の土地に3つの等級があり、同量の資本が投入された場合、以下のような生産量が得られるとする。
土地の等級 穀物生産量(クォ―ター)
第1 180
第2 170
第3 160
第1等級の土地の地代は20クォーター(第3等級と第1等級の差)となる。第2等級の土地の地代は10クォーター(第3等級と第2等級の差)となる。第3等級の土地に... → 続きを読む
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