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リカード「経済学原理」を歩く-131 地代への課税-3 地代の内訳

2019-07-04
【コメント】地代という名目で、賃借人から地主に支払われる報酬には、土地の使用に対するものと、建物等のストックやその改善に対するものがある。地代に課税される場合、前者のみが地主に課されるものであり、後者は、消費者に課されるのでなければ、地主、賃借人にかかわらず、資本が要求する利益水準を満たさないため、生産は阻害される、というのがここでのリカードの主張であろう。 (訳) 地代に課税されるなら、地主は、それが土地の使用に対して支払われるものなのか、建物やストックの改善に対して支払われるものか判別しようとすることは疑いない。後者は、家や建物の使用料と呼ばれるべきものである。すべての土地が耕作された(地代が発生しない)場合には、このような建物やその改善は賃借人によるものであり、地主によるものではない、ということになる。地主の資本は、実はそのような目的で使われるかもしれない。名目的には賃借人により...
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リカード「経済学原理」を歩く-130 地代への課税-2 生産を阻害

2019-07-03
【コメント】リカードは、地代に課される税金は、地主の利益への課税ともいえるもので、それは生産を妨げることになる、とする。そして、課税分だけ生産物価格が上昇しなければ、生産されないことになるため、結局のところ生産物価格が上昇し、消費者が負担することになる、と述べる。  また、地代と名がついていても、厳密には土地の利用に対して支払わるのが地代であり、建物、備品に支払われるものは利益であるとして区別している。 (訳) 地代が発生する場合に、地代に課される税金は、地主の利益への課税ともいえるものであり、耕作をさまたげることになる。土地の地代という言葉は、他でも見られるように、農業者が地主に支払う地代相当の価値の総額のことをいう。地主が払う建物や備品、その他の費用は、農地の厳密にストック部分を形成し、もし、地主によって供給されなかったら、賃借人が備え付けるものである。地代という名で、...
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リカード「経済学原理」を歩く-129 地代への課税-1 地主がすべて負担

2019-06-30
【コメント】地代への課税は、すべて地主が負担し、他に転嫁されることはないし、地代に課税されたからといって、地代を引き上げることはできない、生産物の価格を引き上げることもない、とする。地代に課税されても、差額地代に変化は生じないからである。 (訳) 第10章 地代への課税 地代への課税は、地代に影響を与えるだけであり、すべて地主が負担する。他のいかなる消費者層にも転嫁されることはない。地主は課税されたからといって、その地代を引き上げることはできない。なぜなら、その土地の生産物と、耕作される最も劣等な土地、その他の等級から得られる生産物との差は変らないからである。1,2,3等級の土地が耕作されているとする。それぞれ、同じ労働投入量で、180、170、160クォーターの小麦を生産する。しかし、第3等級の土地は地代を払わない。したがって、課税されない。第2等級の地代は10クォ―ター、第1等級...
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リカード「経済学原理」を歩く-128 生産物への課税-17 比較生産費は変らない

2019-06-29
【コメント】リカードは、(生産物への課税による)商品価格の上昇は、外国貿易において、自国商品を比較劣位におくことはない、とする。比較生産費説に立った考え方であるといってよいだろう。 (訳) 自国の商品価格の上昇は、時に輸出を制限し、いつくかの商品の輸出をできなくしてしまうが、それは外国貿易を著しく妨げることはない。外国市場での競争に関する限り、自国を比較劣位におくことはないだろう。 (第9章おわり) (original text) Although then the rise in the price of most of our own commodities, would for a time check exportation generally, and might permanently prevent the exportation of a few commo...
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リカード「経済学原理」を歩く-127 生産物への課税-16 最適な資本の配分を妨げる

2019-06-28
【コメント】リカードは、生産物への課税で、資本の最適な配分が妨げられる、と説く。自然価格の形成がそこなわれるからである。 (訳) この主題の考察を単純化するために、原材料の価値の上昇は、同じ比率ですべての国内の商品に影響を与える、つまり、1つが10%上昇すれば、他も全て10%上昇すると、と仮定してきた。しかし、商品の価値は、原材料と労働から様々に異なって形成される。例えば、貴金属から作られるすべてのものは、土壌の生産物の上昇の影響は受けない。生産物への課税により、商品の価値におよぼす作用は実に様々になることは明らかである。この作用により、特定の商品の輸出は、促進、または妨げられる。それは、間違いなく商品への課税と同様の不都合を生じ、商品間の平常の関係を破壊する。このように帽子の自然価格は、布1.5ヤードと同じである代わりに、1.25ヤードの価値にしかならないかもしれず、または、1.75...
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リカード「経済学原理」を歩く-126 生産物への課税-15 外国貿易のメリット

2019-06-27
【コメント】リカードは、外国貿易が行われれば、国内の生産物価格上昇の影響を受けることはなくなるとし、ここでも外国貿易のメリットを説く。ただし、リカードが「海外の自然価格と国内の自然価格の比較による」と自然価格と述べていることに注意が必要だ。つまり、リカードは市場の完全性(完全競争市場)、裁定が完全にはたらくことを前提に議論を展開している、と推定される。 (訳) しかし、貨幣価値が増大した場合、それは国内だけでなく外国の商品に対しても上昇するのではないか、したがって、外国商品を輸入するすべての誘因がなくなるのではないか、との反論もでるだろう。外国で100ポンドする商品を輸入し、国内で120ポンドで売っていたとする。貨幣の価値が英国で上昇し、国内で100ポンドでしか売れないとなったら、輸入はやめるべきであろうということになる。しかし、そのようなことは決して起こらないだろう。商品を輸入する動...
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リカード「経済学原理」を歩く-125 生産物への課税-14 貨幣の取引需要を維持するテクニック

2019-06-25
【コメント】ここは貨幣数量説に基づくややテクニカルな内容である。ここで「貨幣」といっているのは、金や銀などの貴金属、ないし貴金属で鋳造された貨幣のことだろう。生産物への課税によって商品価格が上昇する。輸出によって国内の取引需要を満たす貨幣量を維持する、と解してよいだろう。 (訳) 生産物への課税の影響は、その生産物が投入されたすべての商品の価格を引き上げることであろう。しかし、税の比率に応じてということにはならない。一方、その生産物が投入されていない、金属から作られた物品から作られた他の商品は、以前と同量の貨幣ですべての取引を行うことを可能とするため価格が下落するだろう。 すべての国内生産物の価格を上げる効果をもつ税は、ほんの限られた期間を除けば、輸出を妨げることにはならないだろう。もし、国内の価格が上昇すれば、すぐに輸出されてもうけられることにはならないだろう。その税金は貨幣価値...
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経済短歌: マイナス金利は縮小経済の象徴か? Negative Interest Rates – A Symbol of Sinking Economy?

2019-06-25
経済短歌 Economic Tanka マイナスの 長期金利は 沈みゆく 国の経済 映す鏡か? Negative Long-term Interest Rates, Are They the Stimuli to the Eonomy, Or The Mirror Image of The Sinking Nation, Too Many Shots in the Arm?   難しい議論はやめて、シンプルなインプレッション、印象だ。 マイナスの長期金利は、ネガティブな投資リターンの象徴に見えてしまう。 投資のリターンがマイナスであれば、投資する気にはなれない。 投資の縮小は貯蓄の縮小を意味するだろう。 つまり、所得の縮小をも意味するという見方もでてくる。 沈みゆく国、縮小経済の将来を映した鏡なのか?   by Kota Nakako 6/25...
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リカード「経済学原理」を歩く-124 生産物への課税-13 紙幣の増刷は解決策にはならない

2019-06-25
【コメント】リカードは、金本位制下の貨幣数量説にもとづいて課税による生産物価格の上昇の影響を考察し、金の流入がなければ、同量の取引量を回転(取引)させることができなくなる、という問題を述べる。紙幣を増発しても、それは貨幣価値の減少を生ぜしめるので本質的な問題を解決することにはならない、と解してよいだろう。 (訳) 第4の、そして最後の触れるべき反対は、生産物の価格を上げることによって、その生産物が投入されるすべての商品の価格が上昇することであり、一般市場において海外の製造業者と平等に競争することができなくなることである。 まず第一に、穀物と全ての国産商品が、貴金属の流入なくしては上昇しえないことである。というのは、価格が高くなると、同量のマネーでは低い価格の時と同じように、同量の商品の取引を回転させることはできないからだ。そして、貴金属は高くなった商品で購入することはできない。多く...
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リカード「経済学原理」を歩く-123 生産物への課税-12 正解のない問題

2019-06-23
【コメント】リカードは、「課税は正解のない問題(a choice of evils)」という。つまり、唯一無二の最適解がある問題ではなく、生産活動を妨げることがなく、各階級がおおむね妥当といえる公平公正な方法を見出していく現実的な問題である、ということであろう。そして、「平等とはいえないが富裕者階級が負担せざるを得ず・・」とも述べている。 (訳) 課税はいかなる形式であっても、正解のない問題(a choice of evils)である。それが利益に課されないのであれば、支出に課される。等しく負担され、再生産を妨げなければ、課税対象がなんであれ違いは生じない。生産、ストックの利益への税金は、直接に利益に課されようが、間接的に土地やその生産物に課されようが、他の税金に比べて、いかなる階級の人もそれを逃れることができないという長所がある。それぞれが、その収入、資力にしたがって貢献するわけであ...
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