‘経済・投資 Money’ カテゴリ

リカード「経済学原理」を歩く-140 土地税(Land Tax)-6 資本ストックが負担

2019-07-23
【コメント】続けて、リカードは土地税の解釈に関して、アダム・スミスと異なる見解を述べる。つまり、土地税は、実質的には消費者に課されるのであるが、労働者はその資金不足のゆえに、一部は資本ストック、つまり利益に課されることになる、地代に課されるものではない、とする。 (訳) スミス氏のこの主題に関する見解は、次のような説明にあらわれている。「十分の一税とその他のすべてのこの種の土地税は、一見、完全に平等に見えるが、実は、まったく不平等な税であり、異なる状況に応じて、地代として支払われる生産物の相当部分にかかるものである。」しかし、わたしは、このような税金は、農業者、または地主の各層が異なる重さで負担する不平等な税ではない、ということをこれまで説明してきた。なぜなら、彼らは生産物の価格の上昇によって償われているからで、生産物の消費者として、その相当分の税負担をしているに過ぎないからである。賃...
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リカード「経済学原理」を歩く-139 土地税(Land Tax)-5 アダム・スミスの誤り

2019-07-19
【コメント】リカードは、土地、地代、生産物に課される税について、すべて実質的に地主が負担しているとするアダム・スミスの見解が誤りであることを指摘する。リカードは、まず、一般的に地代とわれているものについて、土地の用役に支払われるものと、資本の用役に支払われるものとを区別する。そして、土地税、生産物に課される税は、価格の上昇によって実質的に消費者によって負担されるとする。 (訳) アダム・スミスは、地代について得意な見方をしている。各国で多くの資本が費やされているにもかかわらず、土地にかかるすべての税は、地代が払われない土地であれ、土地税として土地自体にかかるものであれ、十分の一税であれ、土地の生産物への税であれ、農業者の利益に課されるものであれ、すべて地主によって支払われる、としている。また、一般的に税は、名目的には賃借人により支払われるとしても、地主が実質的に負担しているとする。ア...
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リカード「経済学原理」を歩く-138 土地税(Land Tax)-4 土地税の問題点

2019-07-18
【コメント】リカードは土地税の問題点を次のように指摘する。土地税は、最下級の土地を基準として穀物価格を引き上げ、土地の等級による生産力の違いに応じて課されるわけではない。そのため、それよりも上級の土地の地主は、結果として、その価格の上昇による恩恵を受けることになる。 (訳) すべての耕作される土地に、等級の区別に関係なく均等に課される土地税は、耕作される最下級の土地の耕作者が支払う税の比率にしたがって穀物価格を引き上げる。同じ資本量が投下された土地の生産物の産出量は、その等級によって著しく異なる。もし、与えられた資本で1000クウォーターの穀物を生産する土地で、100ポンドの税金が課されると、穀物価格は、農業者の税金分の負担を補うためクウォーター当り2シリング(KN注: クウォーター当り税0.1ポンド=2シリング; 旧通貨単位)上昇する。しかし、同じ資本でより等級の高い土地で;200...
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リカード「経済学原理」を歩く-137 土地税(Land Tax)-3 アダム・スミスの4つの格言

2019-07-17
【コメント】リカードは土地税は、アダム・スミスが述べる、税に関する4つの格言に反している、とする。4つの格言とは、①能力に応じたもの、②恣意的でないこと、③簡素であること、④できるだけ少額であること、である。 (訳) 今述べた土地税は、非常に不平等な税であり、アダム・スミスによれば、すべての税が従うべき、税に関する一般的な4つの格言に反している。4つの格言は、以下の通りである。 1. すべての国の主体は、それぞれの能力に応じて、できる限り政府に貢献すべきである。 2. 各個人が払うべき税は、確かなものであり、恣意的なものであってはならない。 3. すべての税は、その時に、納税者にとって、最も都合の良い方法で課されるべきである。 4. すべての税は、それが国庫に入る以上に、人々の懐から容易に持ち出され、支払いやすいようにできるだけ少額になるように工夫されるべきである。 ...
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リカード「経済学原理」を歩く-136 土地税(Land Tax)-1 地主には地代税しか転嫁できない

2019-07-16
【コメント】リカードは、すべての土地に課される土地税を地主に転嫁することはできないとする。なぜなら、限界地においては地代は発生せず、もし、課税されるならば、生産物の価格が税相当分上昇しなければ、資本はその土地から引き上げられて耕作されなくなるからである。 第12章 土地税 CHAPTER XII. LAND-TAX. (訳) 地代とその変動に比例して課される税金は、実質的には地代に課される税である。土地税は、地代が生じない土地には課せられず、また、地代が発生しない土地に利益を得る目的で投下された資本の生産物にも課されることはない。すべて地主に課せられ、地主が負担することになる税金である。いかなる点においても、このような税は地代への税金と異なることはない。しかし、もし、土地税がすべての耕作された土地に課されるのであれば、いかにその税が穏やかなものであっても、それは生産物への課税とい...
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経済短歌: 経済学古典を読む意味 Why Reading Economics Classics – Leading to Value Investing

2019-07-15
経済短歌 Economics Tanka 経済の 古典を読むは 真(まこと)なる エコノミストの 視点得(う)ること Reading Economics Classics Is to Know and Gain True Insight Into Worldly Affairs With the Eye of an Economist (注) 経済学の教科書を学ぶことだけでなく、経済学の古典を読むということは、時代が変わっても変わらない、真の経済学的発想、視点、行動力を養うことであると思います。 リカード、ケインズなどの主著を読みことは、不変の経済学的発想を知り、(願わくば)身につける有効なアプローチであると感じるのです。 それは勿論、投資、特にバリュー投資につながるものです。 「経済学の古典を歩く」シリーズのねらいのひとつがそこにあります Kota Na...
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リカード「経済学原理」を歩く-135 十分の一税(Tithes)-4 平衡税

2019-07-15
【コメント】国内産布に課税されると、課税されない輸入布がより安くなり、需要される。資本は布の生産から他の商品の生産に向かうだろう。輸入布が課税される(平衡税)と国内産布が需要される。しかし、いずれにしても国内生産者は課税で、より容易な生産をすることはできなくなる。生産への課税により、限界費用が上昇するからである、と解することができる。 (訳) 布の売買が完全に自由に行われたら、国内の製造業者は輸入するよりも安く布を売ることができるかもしれない。もし、税金が国内の製造業者に課され、輸入布に課されないなら、資本は痛手を受けるため、布の製造から他の商品の製造に向けられるだろう。それは、国内で生産するよりも、安価に輸入することができるからである。もし輸入布に税金が課されれば、布は再び国内で生産されるかもしれない。消費者は、当初は、輸入布よりも安かったから国内産の布を購入した。次に、外国産の布...
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リカード「経済学原理」を歩く-134 十分の一税(Tithes)-3 従量税の問題点

2019-07-14
【コメント】リカードは、十分の一税のような従量税は、生産量の拡大にともなって純所得に対する比重を増すため、生産者階級の分け前を減少させる。それは、また輸入奨励金として作用するため、土地への需要を減少させ、地主にとっても重くのしかかることになる、とする。 (訳) 生産量の拡大により耕作の困難さは増加するわけだが、十分の一税と同じように生産に比例して課される他の方法で、教会に同じ価値のものが納めらるとしたら効果は全く同じになる。教会は、常に一国における土地と労働の純生産物のより多くの割合を得ていくことになる。進歩する社会においては、常に粗生産物に比例して土地の純生産物は減少していく。進歩する国であれ、停滞した国であれ、すべての税金が最終的に支払われるのは、その国の純所得からである。粗所得の増加と共に増加するが、実質的には純所得にかかる税金は、とても重く、耐えがたいとってもよい税金だ。十分...
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リカード「経済学原理」を歩く-133 十分の一税(Tithes)-2 反対する理由

2019-07-09
【コメント】リカードは、十分の一税は、貨幣地代に影響を与えないが、穀物地代には大きな影響を与えるとし、十分の一税に反対する。その理由は、それが恒久的、固定的税ではなく、穀物生産の困難さに伴い増加する、というものだ。生産における収穫逓減により、十分の一税にしても、生産物課税にしても、税負担は逓増することになる。これが市場における最適生産を妨げるのである。 (訳) 十分の一税も貨幣的税も地主の貨幣地代に影響を与えない。しかし、両方とも穀物地代に大きな影響を与える。貨幣的税がどのように穀物税に影響するかは前述した通りだが、同様な影響が十分の一税に作用することは明らかである。もし、第1、2、3等級の土地が各々180、170、160クォ―ターを生産すると、地代は、第1等級20クォ―ター、第2等級10クォ―ターになる。しかし、十分の一税が課されるともはや同じ割合を得ることはできなくなる。もし、十...
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リカード「経済学原理」を歩く-132 十分の一税(Tithes)-1 消費者に転嫁される

2019-07-06
【コメント】十分の一税(Tithes)とは、生産物に課税される。現在では廃止されている。リカードは、十分の一税は、生産物への課税と同様、消費者に転嫁され、農業者は通常の利益を得ることができる、とする。 (訳) 第11章 十分の一税 十分の一税は土地の生産物への課税である(KN注: 今は廃止されている)。生産物への課税と同じくすべて消費者に転嫁される。十分の一税は、土地の使用に関する地代への課税と異なり、生産物の価格を引き上げる。最下級な土地も、最上級の土地と同様に、土地からの生産量に正確に比例して、十分の一税を支払う。その意味で、十分の一税は平等な税である。 地代を支払わない最下級の土地が穀物価格を決定するわけであるが、その農業者は、十分な量を生産し、通常のストックの利益を得ることができる。小麦の価格がクォ―ター当り4ポンドであれば、同様の利益を十分の一税が課された後にも得ること...
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