‘経済・投資 Money’ カテゴリ
米中貿易戦争の本質と今後の読み
2019-08-24
ハイテク知的所有権をめぐる攻防
わたしは、米中貿易戦争の本質はハイテク知的所有権の保護に関する攻防とみている。米国は知的所有権が保護のないまま自由貿易を行えば、中国に良いとこどりをされる。それは覇権の喪失をも意味するだろう。とすれば、多大な犠牲を払っても、ハイテク知的所有権を保護する動きにでることになる。
中国は、米国市場という巨大なマーケットを失うという代償を払うということ以上に、ハイテク産業が打撃を受ける可能性がある。中国が米ハイテク知的所有権が無くても、自国のハイテク産業の優位性を保てるという自信、力があれば、米国の圧力に抵抗、屈しないだろう。
ポイントは、保護貿易によって米ハイテク知的所有権を保護できるかどうか
米国は知的所有権の侵害を、保護貿易で本当に阻止できるのか、ということが決定的に重要なポイントになる。保護貿易によっても知的所有権の侵害が阻止できないのであれば、貿易... → 続きを読む
政治的不確実性がマーケットに及ぼす影響 – SAJ7月号読む
2019-08-24
政治的不確実性がマーケットに及ぼす影響 - 証券アナリストジャーナル7月号特集を読む
昨今、米中貿易摩擦に代表されるように、国家主権、保護主義的な動きによる政治的不確実性が高まっている。そのマーケットに及ぼす影響の大きさは実感するところである。SAJ7月号では、それを定量的に分析することを試みている。
政策不確実性指数(EPUインデックス)
行動経済学的なアプローチで新聞記事をベースに不確実性を指数化したのが、政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Indices: EPUインデックス)である。EPUとVIX(S&P500のインプライド・ボラティリティ・インデックス)に高い相関性があることを指摘している(伊藤新)。
リスクプレミアムの上昇とリターンの低下
また、政策不確実性がエクイティ・プレミアムに影響を及ぼし、株式リターンを低下させてい... → 続きを読む
議決権行使について – SAJ6月号読む
2019-08-22
議決権行使について - 証券アナリストジャーナル6月号特集「議決権行使」を読む
SAJ6月号では議決権行使が特集されている。SAJでは、基本的に株主としての機関投資家の議決権行使の実効性を論じている。もちろん議決権行使を通じて、投資先企業の経営に影響を与え、株主価値、企業価値を高める経営をうながすことが目的である。
議決権行使への関心の高まり - 日本版スチュアードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コード
背景には、アベノミクスの第三の矢、成長戦略にのっとり、2014年2月の「責任ある機関投資家の諸原則」(日本版スチュアードシップ・コード)制定、15年6月の企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上のための「コーポレートガバナンス・コード」の施行があるという。このような資本市場の本来的な機能が政府主導によってはじめて積極化するというのはいかにも日本的であるという感もあるが、経緯は... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-147 土地税(Land Tax)-13 セイの誤り-2-2
2019-08-20
【コメント】リカードは、地代を考慮すれば資本の利益率は同じであり、また税を実質的に負担しているのは、生産者ではなく消費者であるとする。セイの誤りは、地代を考慮にいれていないことであるとしている。
(訳)
セイ氏のここでの誤りは、これら農業者2者のうち、一方の生産物の価値は、資本を回復させた後に、他方の生産物の価値はよりも大きく、耕作者たる両者の純収入は、その差だけ違ってくると仮定していることにある。セイ氏は、これら耕作者が支払わなければならに地代の違いを考慮にいれることを、完全に見落としている。同一の用途に対して2つの利益率があるということはあり得ない。したがって、同一の資本に対して生産量が異なるときは、異なってくるのは地代であり、利益ではない。2000フランの資本をもつある人が、その利用によって10,000フランの純利益を得ることができ、8000フランの資本を持った他の人が4000フ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-146 土地税(Land Tax)-12 セイの誤り-2-1
2019-08-14
【コメント】リカードは、土地税に関し、セイを引用し、その誤りを指摘する(次回)
(訳)
「隣地が、牧草地、森林地で、年間12,000フラン相当の生産物をもたらし、その費用がわずか2000フランにしかならないとすると、隣人は年間10,000フランの純収入を得ることになる。土地の生産物の12分の1は、どんなものであれ徴収する、という法律がある。この法律によって、第1に、1000フラン相当の穀物が徴収され、第2に、1000フラン相当の干し草、畜牛、木材が徴収される。何が起こったか? 当人からは、純所得4000フランの4分の1が徴収される。その所得が10,000フランだった隣人からは、その10分の1だけ徴収される。所得は、資本を完全に使用前の状態に回復させて残った純利益である。商人は、1年間の全売上に等しい所得を得るだろうか?多分、得ないだろう。彼の所得は、前払い分を上回った売上の部分に過ぎ... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-145 土地税(Land Tax)-11 土地税は生産を阻害する
2019-08-12
【コメント】リカードは、土地に課されるいかなる税も、生産を阻害しないことはない、とする。政府を逆なでさせないためか、曲りくどい言い回しになっている。
(訳)
もし土地にいかなる税金もかけられず、他の方法により徴収されたなら、農業は、これまで以上に繁栄したであろう。なぜなら、土地に課せられる税金は、いかなるものも農業を促進することにはならないからだ。穏やかな課税は、多分おおきな足かせにはならないだろう。しかし、それが生産を促進することにはならない。英国政府は、セイ氏が想定したような見解はもたなかった。農業階級の将来の税金を免除すること、国家が必要とする供給を他の階級から得るとはしなかった。政府は、ただ次のように言うだけだ。「土地にこれ以上の負担をかけることはないだろう。しかし、政府は他の方法によって、国家の緊急時に、分担すべき全ての税を徴収する権利を有している」と。
実物税、あるいは... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-144 土地税(Land Tax)-10 消費者に転嫁される
2019-08-06
【コメント】リカードは、土地に課せられる税は、実質的には消費者に転嫁される、とさらに述べる。
(訳)
もしセイ氏の意見が取り入れら、農業者の収入の十分の一が税として徴収されるとしたら、農業者の利益にかかる部分的な税となり、その他の資本の利益にはかからないだろう。税金は生産の多寡にかかわらず全ての土地にかかることになる。そして、いくつかの土地においては地代が支払われないために、税を地代で補うことができないだろう。利益に対する部分的な税は、そのもととなる取引にはかからない。業者は取引をやめるか、または、税を自分で補うことになる。地代を払わない生産者は、生産物価格の上昇分報われる。このように、セイ氏の提案に従えば、税の実質的な負担は、地主や農業者にかかるのではなく消費者にかかることになる。
もし、セイ氏が提案する税が、土地から得られる総生産物量または価値の増大に比例して増加すると、それは... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-143 土地税(Land Tax)-9 セイの誤り
2019-07-28
【コメント】リカードは、土地税を含めて税について、一貫して否定的な見方をしている、といえるだろう。セイの英国の土地税に対する肯定的な見方についても、誤った見方であるとしている。
(訳)
もし税金が、賃借人によって、初めに、地主でなく消費者へ転嫁され、その後、変化がなければ、生産物の価格は、その税金分上昇すし、その後は変化しないだろう。もし、それが、平等に課されないと、第1の格言には反しないが、第4の格言には反することになる。それは、特定の階層にかたよって課されるのではないにしても、国庫にもたらす以上に、より多くを人々のふところから奪うことになるだろう。セイ氏が次のように言うとき、氏は、英国の土地税の性質と効果について誤った見方をしているように思える。「多くの人は、英国の農業の大いなる繁栄は、この固定した評価によるものだとしているが、それは疑いようがないところだ。個々の取引と資本にかか... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-142 土地税(Land Tax)-8 テナントの前払
2019-07-25
【コメント】税についてのリカードの叙述は退屈であるが、リカードは自らの経済学を分配論としてとらえており、税の負担の問題は重要なテーマである。ここで、経済学特有の視点が提供されている。つまり、税を納めることと、実施的な負担は、必ずしも一致していないということである。地主は、表面的には土地税を支払うが、実質的な負担者ではない。
(訳)
アダム・スミスは言う。「土地税は、英国のそれと同じように、ある不変の規律によって、それぞれの地域で評価されている。しかし、最初に制定されたときは、同等だったとしても、時の経過とともに、州内の異なる地域における耕作についての改善や怠慢の度合いの違いによって、必然的に同等ではなくなる。イングランドにおいては、ウィリアム4世とメアリーによって、異なる州や教区の土地税が決められたが、当初においても、評価は同等ではなかった。したがって、土地税は、4つの格言の第一に反... → 続きを読む
リカード「経済学原理」を歩く-141 土地税(Land Tax)-7 避けがたい不利益
2019-07-23
【コメント】リカードは、いかなる税金であれ、それは生産を阻害しないことはない、とする。但し、幸いにも資本の形成を著しく害するほどの課税する自由主義国はない、とも述べる。税金は必要悪、という見方といってよいだろう。
(訳)
十分の一税と土地とその生産物にかかる税金は、耕作、生産を阻害することになるだろう。いかなるものであれ、一般に需要される商品の交換価値の上昇は、耕作と生産を阻害する傾向がある。しかし、これは課税に不可分の悪しき問題であり、ここで扱っている特定の税金にだけあてはまるものではない。
国家による課税のすべてにあてはまる、避けることができない不利益と見なすことができる。すべての新しい税金は、生産へのあらたな負担であり、自然価格を引き上げる。以前にはその税の負担者が自由に使うことができた一国の労働の一部は、国家のものとなる。この部分が非常に多額になり、通常は十分な余剰生産物に... → 続きを読む
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