実物不動産とリートへの混合投資アプローチ
「不動産アロケーションの混合投資アプローチ: 実物不動産とグローバル上場リートへの混合投資のパフォーマンスへの示唆」
‘Alternative Investment Analyst Review – Q1 2016’ に、実物不動産とリートへの混合投資のパフォーマンスについて興味深い実証研究が掲載されている。著者は、Alex Moss (Founder, Consilia Capital, Visiting Professor, Henley Business School)、Andrew Clare (Professor of Asset Management, City University of London, Cass Business School)、Stephne Thomas (Professor of Finance, City University of London, Cass Business School), James Seatonの4氏。ロンドン・シティ大学のカス・ビジネス・スクールを中心とした研究者グループである。
本研究は、ドイツの非上場不動産(Spezialfonds)インデックスと、グローバルな上場不動産証券のインデックス(EPRA Global Developed Index)の2004年から2015年のデータを用いて、リターンとリスクを検証したもの。
実物不動産とリートへの投資は二者択一の問題ではない
実物不動産への投資に上場リートへの投資を混合させることにより、パフォーマンス(リターン)が高まるばかりでなく、リスクプロファイルも改善するという示唆が得られる。
同期間の独非上場の年率リターンは、2.88%であった。これに対してグローバル上場の年率リターンは9.64%。混合(70/30; 非上場70、上場30)の年率リターンは5.42%。リスク(ボラティリティー)は、それぞれ1.03%、21.90%、6.53%。確かに、上場リートのリターンは高い一方、ボラティリティー(リスク)は高くなる。シャープレシオ(リスク当たりのリターン)は、1.05%、0.36%、0.55%となる。
上場リートのリスク(ボラティリティー)の高さへの対策として、トレンドフォローイングのトレーディングを採用することにより、上場リートのリターンを高める一方、リスク(ボラティリティー)を低下させることができ、上場と混合のシャープレシオを非上場より高めることができるとの示唆が得られる。
不動産投資に当たって、実物不動産とリートは二者択一の問題ではないと見るのが妥当である。さらに、上場リートへの投資にあたってのトレーディング戦術についても本研究は示唆を提供している。トレーディング戦術にあたって、トレンドフォローイングがより勝れたリターン・リスクプロファイルを提供するというのはアノマリーといえる。この点についてはさらなる分析が必要であろう。
2016.4.19