JPモルガン・チェース 3Q決算(3) 法人・投資銀行部門(CIB)

中湖 康太

インプレッション

CCBに次ぐ稼ぎ頭

JPMCの法人・投資銀行業務部門(Corporate & Investment Banking: CIB)の3Q2018決算を見てみよう。

CIBの純利益は、3%増の26億ドルで全社の31.3%を占めた。CCBに次ぐ稼ぎ頭。ROEは全社並の14%。

株式好調、債券不調

CIBの純収入は2%増の88億ドル。このうち投資銀行収入は前年並みの17億ドル。株式が好調だったが、債券が足を引っ張った形だ。金利上昇は債券部門には逆風となる。

非金利費用増

昨年が強かったこともありアドバイザリーフィーは減少したがシェアはアップしたとしている。非金利費用は8%増となっており、その主因の1つがバンカーへの報酬増である。これはJPMCに限ったことではない、投資銀行業界のトレンドである。

バンカーへのコンペンセーションをどう見るか?

投資銀行業務は良くも悪しくもレガシービジネスであり、バンカーの報酬が高い。わたしも株式調査部、またバンカーとして投資銀行部門にいたわけであるが、これについて考えたことがある。 

主として慣習と競争の産物

これは慣習もあるが、何よりも競争の産物である。高い専門性、ハードワークを要求されることがある。また、CIBのビジネスはより変動が激しいことがある。つまり、ハイリスクなビジネスなのである。

全体として好況、金利上昇からポジティブな影響を受ける

JPモルガン・チェースは全体として、好況、金利上昇からポジティブなインパクトを受ける金融サービス会社といえる。

CIB 3Q決算 Earnings Release

純収入2%増、純利益3%増、投資銀行業務は横ばい

純利益は3%増の26億ドル。純収入は2%増の88億ドル。銀行業務収入は4%増の32億ドル。投資銀行収入は、強かった昨年と同水準の17億ドルとなった。市場シェアは増加した。強かった株式引受に対して、債券引受とアドバイザリーフィーが昨年より減少し相殺した。

トレジャリーサービス収入は12%増の12億ドル。金利上昇と営業預金の増加が寄与した。貸付収入は前年並みの331百万ドル。マーケット・インベスター・サービス収入は1%増の56億ドル。市場収入は2%減の44億ドル。主因は債券市場収入が10%減少したこと。しかし、税制改革(TCJA)による影響を除くと、市場収入は1%増。そのうち、債券市場収入は6%減だった。

債券部門不調

債券市場収入は減少し28億ドルとなった。弱含みの利子、融資、クレジット・トレーディング、証券化商品を反映した。マージンの縮小と競争によるスプレッドの減少の結果である。昨年は厳しい環境にあったエマージングマーケッツの活発化、商品の増収がある程度補った。

株式部門好調

株式市場収入が17%増の16億ドルとなった。顧客の活動が活発化し、全ての商品で増収となった。証券サービス収入は5%増の11億ドル。金利上昇、営業預金増、新顧客からのより高い資産ベースのフィーが主因。

コスト増

非金利費用は8%増の52億ドルだった。より高い法務費用、テクノロジーへの投資、バンカーへの報酬増、取引量の増加に関連したコスト増が主因。クレジット損失への引当はローン売却も寄与し42百万ドルの戻入れとなった。

2018/10/24

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