ゴーン不祥事と日産・ルノー資本提携
日産のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で19日に逮捕された。それをもって日産がルノーを敵対視するようなことが報道されている。
それが事実であるとすれば、日産経営陣のきわめて不適切な動きであると感じざるを得ない。
資本経営参加し日産を救ったルノー
日産は、90年代の後半、2兆円の有利子負債を抱えて経営破綻寸前であった。そして、1999年にルノーの傘下に入って人的・経済的支援を受けて経営を立て直すことになった。ルノーから派遣されたカルロス・ゴーンが辣腕を振るったことにより、日産は2003年には負債を完済した。 日産はルノーの資本経営参加によって経営破綻をまぬがれたのである。
「日産の利益がルノーに吸い上げられている」の不可解
破綻寸前の会社に資本を提供し、経営を立て直し、その会社への経営の関与を深めるのは資本主義経済においては極めて自然な流れである。「日産の利益がルノーに吸い上げられている」ということが言われている。これは奇異である。
ルノーは日産の43%を所有する大株主である。日産から利益が吸い上げられ、日産の競争力が失われれば、日産株は下落する。日産の弱体化で最もダメージをうけるのは大株主であるルノーである。日産を弱らせてもルノーは何の得にもならないどころが、最も損を被るのである。
ゴーン問題とルノーとの資本経営提携は切り離して考えるべき
カルロス・ゴーンの問題(さらに検証が必要であろう)と、日産・ルノーの資本経営関係の問題は切り離して考えるべきである。
日産はルノーと良く話し合うべき
日産経営陣が、カルロス・ゴーンの今回の問題をもって、ルノーとの資本業務提携関係を見直すなどというのはいかにも不適切である。日産とルノーはよく話し合いことが何より大切であろう。何といってもルノーは日産の経営危機を救った恩人である。今回の事件は「会社」に対する日本的特殊性をあらわしたものともいえるが、恩を仇でかえすのは日本的な道徳において最も恥ずべき行為である。
日産にとってルノーは欧州、中国を含めグローバルに事業展開するための適切なパートナーと見ることが可能であり、大株主である。
日本の企業文化の国際的信用を傷つけかねない愚
カルロス・ゴーンの不祥事も未だ解明が必要であるが、この事件をもってルノーを敵視し、排除するようなことになれば、日本の企業文化の国際的信用を傷つけることにもなるであろう。そのような愚は避けなければならない。
日産経営陣は、カルロス・ゴーンの問題とルノーとの資本業務提携を切り離して、ルノーと良く話し合い、今後の資本業務提携、グローバル経営を検討することが何よりも大切と思うのである。
2018.11.25