バリュー投資入門(8)バフェット2017(8)
8. バークシャーのマイノリティ投資
最後にバークシャーの上場株式へのマイノリティ投資についてのバフェットの言葉です。マイノリティ投資というのは、支配権を持たない形の投資、通常は持分で20%未満の投資です。バフェット/バークシャーがどういう方針、発想で株式投資を行っているか、一般投資家には最も関心の深いところであると言えます。(青字がバフェットの言葉の中湖抄訳)
株価は長期的には企業の本源的価値を反映する=>バリュー投資の信念
ポイントは、次の3つです。第一に、バークシャーは保有する株式を事業への持分と見ているということ。要は、短期的な売買を目的に保有するのではなく事業主の視点で投資しているということです。
第二に、バークシャーは留保利益の積み上がりを配当とキャピタルゲインで得ていくということ。この背後には株価が長期的には留保利益の積み上がりを反映する、応じて上昇するという信念、実証的に確度の高い現象があります。それが第三のポイントです。
第三に、ベン・グレアムの格言『市場は短期的には投票機であるが、長期的には計量機である』への確信です。
バークシャーの株式ポートフォリオ
次に示したのが2017年末時点の市場価値の大きい15の(マイノリティ)投資保有銘柄である。Kraft Heinz324百万株は除いている。なぜならバークシャーは同社に支配権を持つグループに属しており、同社の利益は持分法として計上されているからである。
持分 コスト* 市場価値 比率
(%) ($million) ($million) (%)
American Express Company 17.6 1,287 15,056 8.8
Apple Inc. 3.3 20,961 28,213 16.5
Bank of America Corporation 6.8 5,007 20,664 12.1
The Bank of New York Mellon 5.3 2,230 2,871 1.7
BYD Company Ltd. 8.2 232 1,961 1.1
Charter Communications, Inc. 2.8 1,210 2,281 1.3
The Coca-Cola Company 9.4 1,299 18,352 10.8
Delta Airlines Inc. 7.4 2,219 2,974 1.7
General Motors Company 3.2 1,343 1,825 1.1
The Goldman Sachs Group, Inc. 3.0 654 2,902 1.7
Moody’s Corporation 12.9 248 3,642 2.1
Phillips 66 14.9 5,841 7,545 4.4
Southwest Airlines Co. 8.1 1,997 3,119 1.8
U.S. Bancorp 6.3 3,343 5,565 3.3
Wells Fargo & Company 9.9 11,837 29,276 17.2
その他 14,963 24,284 14.2
合計 74,671 170,530 100.0
* 実際の購入価額であり、米国会計基準(US-GAAP)の取得価額とは異なる。
持ち分は、バークシャーの米国会計基準(US-GAAP)のバランスシートに176億ドルでのっている。その市場価値は2017年末で253億ドルで、取得原価は98億ドルである。
同表の株式はTodd Combs又はTed Wechlerの責任に属する。二人は私と一緒にバークシャーの投資活動を行っている。私からは独立して120億ドル以上を運用している。二人の投資活動について、通常、月次のポートフォリオサマリーから知っている。2人が運用する250億ドルのうち80億ドル以上がバークシャーの子会社の年金資産である。但し、年金投資は前記のバークシャー保有投資銘柄には含まれていない。
金融サービスセクターの保有比率の高さ
上記の保有リストを見ると金融サービスセクターの保有比率が7社市場価値ベースで46.7%と半分近くを占めています。バークシャーは2008年のサブプライム危機の際に暴落した金融サービスセクター銘柄へ投資を行いました。株価、市場価値は3.3倍となり復活したことを示しています。また、バリュー投資の視点からなお割安であるとみなしていると言えるかもしれません。
テクノロジー株はApple Inc.のみでポートフォリオシェアは16.5%です。バークシャーは最近のテクノロジー株の高騰には乗れていないわけです。これはバリュー投資の視点からは、これらの企業の成長性が高いことを認めたとしても、高い利益成長率とその持続性に懐疑的である、ないし確実性について確信を持てないことを示していると言って良いでしょう。
投資は事業の持分=>事業主として投資する
チャーリーと私はバークシャーが所有する普通株式を、チャート・パターンやアナリストの目標株価、メディアに登場する評論家の意見によって売買されるチッカーシンボル(株式コード)と見るのではなく、事業への持分と見ている。
配当による分配
バークシャーは、その分散された公開企業へのマイノリティ持ち分である株式ポートフォリオから2017年に370億ドルの配当を得た。これは米国会計基準(US-GAAP)による数字であるり、バークシャーの四半期レポート、アニュアルレポートには営業利益として計上されている。
キャピタルゲインにより内部留保を長期的に実現
しかし、この配当の数字は、これらの保有銘柄がもたらす真の利益を過小評価しているといえる。バークシャーの「株式保有に関するビジネス原則」(“Owner-Related Business Principles”)の原則6に従って、過去何10年にわたって我々は投資先企業の配当として配分されない利益をキャピタルゲインの形で得ている。
米国会計基準(US-GAAP)の変更による影響
バークシャーののキャピタルゲイン(又はロス)はでこぼこになるであろう。というのも新たな米国会計基準(US-GAAP)は未実現損益を利益に反映することを求めているからである。バークシャーは投資先企業を我々のグループの一員と見なしているわけだが、時の経過によって留保した利益がバークシャーの相応のキャピタルゲインに形を変えることになることに自信を持っている。
ベングレアムの不滅の格言:「市場は短期的には投票機であるが、長期的には計量器である」
このような留保利益とバリューの積上がりのつながりは短期に探知することは困難である。株式というものは上がったり、下がったりするものであり、一見、年々に積上がる基礎となるバリューとは無関係にみえるからである。しかし、時間の経過と共に、ベングレアムのしばしば引用する格言が真実であることを知るのである。「市場は短期的には投票機であるが、長期的には計量器である」
2018/8/21
© kota nakako, gcs