Notes on Ricardo’s Principles (21) – 価値 20

中湖 康太

資本の利益率

以下のリカードの叙述はどう解釈すべきか。耐久性資本が導入され、その耐久性が長い程、資本集約的に生産される商品の生産コストが下がる、つまり、労働集約的に生産される商品に比べて相対価値が下がる。ここでいう、利益とは資本に対するリターンであろう。とすれば、資本投下量が同じであれば、資本の利益率は、市場において競争的に決定されるわけであるから、利益は同じになる、と解すべきであろう。また、賃金が上昇すれば、資本の利益率は減少する、とはいっても、賃金と資本の代替性を考慮すれば、賃金は上昇しつづけることは考えられない。

「機械や耐久性資本が導入される前の経済社会の初期の段階では、同額の資本によって生産される商品の価値はほぼ等しく、又は、労働投入量の多寡に比例して商品価値が変化した。 しかし、高価な耐久性資本が導入された後は、同額の資本で生産されたとしても、商品の価値は、著しく異なることになった。労働投入量の多寡が、相対的価値に影響を与えることは変わらないにしても、それに加えて、もう1つの要素、つまり、賃金や利益の増減が、相対価値に影響を与えるようになった。£5000で販売される商品が、£10,000で販売される他の商品と同額の資本で生産されたとすると、それらの製造業者の利益は同じになる。しかし、それらの商品の価格が、仮に利益率の増減に従って変化しないとすると利益は異なることになる。

It will be seen then, that in the early stages of society, before much machinery or durable capital is used, the commodities produced by equal capitals will be nearly of equal value, and will rise or fall only relatively to each other on account of more or less labor being required for their production; but after the introduction of these expensive and durable instruments, the commodities produced by the employment of equal capitals will be of very unequal value, and although they will still be liable to rise or fall relatively to each other, as more or less labor becomes necessary to their production, they will be subject to another, though a minor variation, also from the rise or fall of wages and profits. Since goods which sell for £5000 may be the produce of a capital equal in amount to that from which are produced other goods which sell for £10,000, the profits on their manufacture will be the same; but those profits would be unequal if the prices of the goods did not vary with a rise or fall in the rate of profits.

生産性向上

リカードの相対価値の表現は、今日的なそれとは、逆の言い回しであると言えそうである。資本の耐久性が上昇する、それは生産性が高まることを意味するであろう。すると、商品の生産コストが下がる、これをリカードは商品の価値が下がると表現する。資本集約的に生産される生産コスト(=商品価値)は低くなり、労働集約的に生産される商品に比べて相対的価値は下がることになる、ということになるであろう。賃金が上昇すれば、その相対価値の差は益々広がる。それに比べれば、資本の耐久性が短い場合は、その程度が低くなる、というように理解されよう。 

「また、生産に使用される資本の耐久性に従って、賃金と逆相関して、その商品の相対価値は変化することになる。つまり、賃金が上層すれば、その相対価値は下落し、賃金が下落すれば上昇することになる。反対に、生産において労働比率が高く、固定資本の比率が低い程、あるいは固定資本の耐久性が短い程、その商品の相対価値は、賃金と順相関して(賃金が上昇すれば高くなり、下落すれば低くなる)変化することになる。」

It appears, too, that in proportion to the durability of capital employed in any kind of production the relative prices of those commodities on which such durable capital is employed will vary inversely as wages; they will fall as wages rise, and rise as wages fall; and, on the contrary, those which are produced chiefly by labor with less fixed capital, or with fixed capital of a less durable character than the medium in which price is estimated, will rise as wages rise, and fall as wages fall.

(2015.9) 

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