アナリストの新たな分析視点-非財務情報 (SAJ Nov.2018読む)
証券アナリストジャーナルのバックナンバー2018年11月号に特集「アナリストの新たな分析視点-非財務情報の活用法」が掲載されている。
見えざる資産
背景には、2014年のスチュワードシップ・コード、2015年にコーポレートガバナンス・コードを政府の「日本再興戦略」にみられるように、無形資産など、企業の見えざる資産を重視することが重要であるという時代の認識があるだろう。
アナリストに求められるものは変わっていない
ITの進化により、単純な財務情報や定性的・定量的な情報はコモディティー化しているということがある。アナリストに求められるものは、数字の奥にある、目には見えない企業価値の創造・増大の源泉を見極める力、ということになる。
ある意味では、優れたアナリストに求められるこのような分析力は今も昔も変わっていないといえるだろう。
優れたアナリストはシャーロック・ホームズ
座談会で、松島憲之氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱チーフアドバイザー)は、次のように述べている。同感である。
「分かりやすく例えて『アナリストはシャーロック・ホームズだ』といつも言っている・・・企業から得られる情報はモザイク状態にあり、それをいかにして一つの情報に構築していくか・・・最終的には数字に落とし込む必要がある・・・非財務情報から得られる情報はパズルの一片のようなもの・・・非財務情報の後ろに隠されている企業価値創造のプロセスが見えてくる。それこそが、非財務情報の活用といえよう」
ピーター・リンチの投資手法
かつてのFidelity Magellan Fundの名ファンドマネージャー、ピーター・リンチも、投資へのシャーロック・ホームズ的なアプローチである。一般人が見落としている事象からバリューを見出す。そして投資する。シャーロック・ホームズの推理はなぜすぐれているのか。与えられた情報は、ワトソンも警部、他の多くの人々も同じある。違いは与えられた情報から本質を見抜く力だ。
アナリストにとっては、財務情報も非財務情報も、企業の競争力、成長性、株式価値、企業価値を見極めるためのものである。
各人が持つ光った何か
プロで生きていくには秀でた何か、光る何かをもっていなくてはいけない。優れたアナリストに求められる要件は、変わっていないのだ。光った何かは、全ての人が持っている。しかし、多くの人にあっては、その光ったなにか、投資対象と見る視点が磨かれずにおかれている。
コモディティー情報しか提供できないアナリストは淘汰される
ITの進化により、コモディティー情報しか提供できないアナリストは淘汰される、ということであろう。その意味では厳しい時代になったといえる。
求められる企業の非財務情報の積極的な開示
もちろん、このような議論の前提として企業側の非財務情報の積極的な開示が求めらることは言うまでもない。上場企業でありながら、今だに閉鎖的な体質を残した企業があることも事実であり、改善が求められる。
Kota Nakako
5/11/2019