2023 地価レビュー 長野県 商業 (茅野 5-1)

中湖 康太

2023 年公示地価レビュー
長野県 商業 (茅野 5-1)
長野県茅野市塚原 2-5-5

長野県茅野市を訪問した。茅野市は、南信地方にあり、八ヶ岳、白樺湖、蓼科高原、車山など観光資源を多く抱える。観光都市である一方、工業も盛んで、工業生産額は長野県 77 市町村中 8 位と上位にある。

公示地価は、51,200(円/m²)で、前年比-1.5%。(更地としての鑑定評価)
所在:茅野市塚原 2-5-5(住居表示)、地積 257 ㎡。

現況は、店舗兼住宅(S3F)。周辺は、店舗、官庁、一般住宅等が混在する商業地域。北西 16m 県道に接道。茅野駅から歩 7 分(520m)、法令上の規制等は、商業(80,400)*。供給処理施設(水道、下水)。標準的使用、最有効使用は共に、低層店舗兼事務所地。   * ( )内は、(建ぺい率, 容積率)

近隣地域は、市役所、銀行等が建ち並ぶ商業地域。幅員16m県道。JR茅野駅東方520m。商業地域(90,400)。標準的画地は、間口約 16.5m、奥行約 13.5m、規模は 300 ㎡程度、形状は長方形。
地域要因の将来予測については、「当地域は周辺に市役所や金融機関が見られ、飲食店や小売店舗等が建ち並ぶ商業地域。地域の商店街は繁華性を失いつつあり、物価高等もあり厳しい商況が続いており、地価は当面弱踏み傾向で推移するものと予測される」とある。蓼科という有数のリゾート地を背景に持っているが(下記)、都市としては、厳しい状況にあるようだ。

「蓼科高原は、長野県茅野市にある高原。北に蓼科山、東に八ヶ岳を望む。八ヶ岳中信高原国定公園に属する。蓼科高原、蓼科中央高原、奥蓼科温泉郷、白樺湖などのエリアに分けられる・・・」
https://ja.wikipedia.org/wiki/蓼科高原

「茅野市北部に位置する蓼科は、平均標高 1,000m を超える高原であることから、一年を通じて涼しくさらさらの空気が特徴。特に夏は国内を代表する避暑地のひとつとして多くの人が訪れます。
風光明媚で、温泉にも恵まれたこのエリアは古くから人々に愛されており、大正・昭和の時代には高浜虚子や伊藤左千夫といった文人や日本画家・東山魁夷、映画監督・小津安二郎などの芸術家たちが愛好しました・・・」(https://navi.chinotabi.jp/tateshina/)

(鑑定評価の手法の適用)
取引事例比較法による比準価格: 52,800 円/㎡
収益還元法による収益価格: 29,700 円/㎡

(市場の特性)
「同一需給圏は茅野市内の既存商業地域及びその周辺地域。需要者の中心は、資金調達可能な地縁を有する個人・法人事業者。周辺には市役所、銀行のほか飲食店、小売店舗等も見られるが、店舗は小規模のものが主であり、経営者の高齢化や商況低迷等から店舗閉鎖も見られ、事業用地需要は総じて弱含みである。中心となる価格水準は、商業地の取引数が限られており、かつ当事者の個別の事情が強く反映されること等から、把握が困難である」とある。

「経営者の高齢化や商況低迷等から店舗閉鎖も見られ、事業用地需要は総じて弱含み」というのは、地方都市商業地の典型的な状況といえるだろうか

(試算価格の調整・検証及び鑑定評価額の決定の理由)
「地域の店舗は、飲食・小売いずれも自用が中心で、貸店舗、貸事務所等は少なく、賃貸市場は全体的に未成熟である。閉鎖した店舗も見られるが、その後賃貸借に至るケースは少なく、適切な賃料水準の把握が困難であることから、収益価格の精度・信頼性は相対的に低いものと判断した。本件では、取引の実態を反映した比準価格を標準として、収益価格を比較考量し、類似の標準地の価格との均衡に留意して、鑑定評価額を上記の通り決定した」とある。

「閉鎖した店舗も見られるが、その後賃貸借に至るケースは少なく・・・」という指摘が、状況を直截に示しているといえるだろうか。蓼科を背景に持つ観光都市としての強みを発揮できる施策はないだろうか?

鑑定評価の収益価格の算定にあたって適用されている還元利回りは 5.3%。想定建物(最有効使用)は、店舗兼事務所(建築面積 120 ㎡、S(鉄骨)3階建て、延べ床面積 360 ㎡。1階:店舗(フロアー貸し)、2階・3階:事務所(フロアー貸し)、敷地内無料駐車場を想定。想定賃料は、1F 2,112 円/㎡、2F 1,865 円/㎡。建物等の初期投資額:60,500 千円(算出基準:160,000 円/㎡ × 360.00 ㎡ × (100% + 設計監理料等 5.00%) 坪当たり建築費約 53 万円を想定(低め?)

(価格形成要因の変動状況)
「一般的要因:前年に比べ市人口はやや減少、高齢化率はやや上昇気味である。物価高等の影響により地方経済の先行き不透明感は依然として漂っている。地域要因、個別的要因:大きな変動はない」とある。

高齢化、人口減少は、日本が直面する課題である。蓼科を背景に持つ強みを発揮する道が求められるだろう

鑑定評価書 (mlit.go.jp)

by Kota Nakako

2022.4

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