出門甚一の冒険 米国株式-1 JDM (金融セクター)

中湖 康太

出門は、米主要企業の決算コンフェレンスコールを聴くようにしている。保有している銘柄は勿論だが、保有していなくても聴くことは投資活動には極めて重要だ。最大の米国は勿論、世界の市場で事業を展開しているからだ。つまり、当該企業が活動する産業だけでなく、世界経済の動向も知ることができる。

その日、米銀最大手のJDモンゴメリー(JDM)の20X3年第4半期決算コンフェレンスコールを聴いた。名CEOとして知られるJames Dillonは、次のように語った。

強い収益力

「堅固な第4四半期をもって20×3年を締めくくった。4Qの純利益は93億ドル、FDICによる証券についての裁量的評価の損失を除けば121億ドル。同年の最高益はNII (Net Interest Income; 資金利益)とCredit (信用)の通常をしのぐ稼ぎを反映しているが、これが平常化したとしても、引き続き健全な収益を継続できると考えている。4QのROTCEは15.0%、通期では21%。

強力なバランスシート

JDMのバランスシートは極めて強く、CET1比率 (コアティア1自己資本比率)は15.0%、極めて大きいといえる5140億ドルの損失吸収余力と1.4兆ドルの現預金と市場性有価証券を保有している。

バーゼルIII endgame

我々は、最近の金融機関に関するバーゼルIII endgameを含む、規制当局による規制案は、消費者、企業、そして市場に甚大な悪影響を与えると引き続き考えている。規制当局が、最終ユーザーに不適当な結果を招くことなく、健全で強い金融システムを促進すべく、適切な修正を行うことを強く希望している。

顧客第一主義の実践

20×3年は、JDMの投資方針と堅固な財務体質の力により、当社の各部門で成長を示した年となった。何よりも重要なのは、良いときも悪いときも、顧客に寄り添うことだ。いくつか例をあげれば、コマーシャル銀行部門では、200万件以上の当座預金口座を増やした。投資銀行部門、市場部門の双方においてマーケットシェアを1%ポイント高め、No.1ランキングを獲得した。法人銀行部門では、前期の約2倍の5000社以上の新規顧客を獲得した。富裕層部門では、4900億ドル超の新規顧客資産流入となり、前年の過去最高を更新した。

抵抗力のある個人消費と米国経済

米国経済は、利上げにも関わらず、個人消費は、抵抗力のある強さをみせ、引き続き伸びており、市場はソフトランディングを予想している。しかしながら、経済は大規模な政府支出と過去の景気刺激策の影響をなお受けていることに注意が必要だ。引き続き、グリーン経済、世界的なサプライチェーンの再構築、軍事支出、高まるヘルスケアコストの支出がある。インフレ圧力は根強く、金利は市場の期待よりも上振れるかもしれない。加えて、注意すべきダウンサイドリスクがある。量的引き締めにより、年間9000億ドル超の流動性が奪われている。我々は、このようなサイクルを貫く引き締めを過去に経験したことがない。加えて、ウクライナ、中東では戦争が続いており、燃料、食料市場、移民、軍事、経済関係を途絶、混乱させる可能性がある。恐るべき人的代償を支払わなければならないかもしれない。このような甚大で、過去に前例のない力が作用していることに用心すべきだ。このような状況をふまえ、適切な対応が求められている。

最後に、世界で最も信頼のおける金融機関たることをならしめているJDMの従業員に感謝したい。彼らは、根気強く、顧客にクレジットを提供、2.3兆ドル超の資本調達を行い、買収したForemost

James Dillonの後に、CFOのJohn Barryは、業績面の補足をした。

「4QのROEは12%、ROTCEは15%、CET1比率15.0%、損失吸収余力はを514十億ドル、RWAは1.7兆ドル、現金・市場性有価証券1.4兆ドル、平均貸付残高1.4超ドル。四半期一株配当は1.05ドル、自己株式取得20億ドル、直近12カ月の株主還元率は41%、一株簿価は前年同期比+16%の104.45ドル、有形一株簿価は+18%の86.08ドル。バーゼルIIIのTier-1自己資本は251十億ドルで、CET1自己資本比率15.0%。全社的レバレッジ比率は6.1%となった。」

出門のインプレッション

以下の通り。

1.  増収増益の好決算。顧客第一主義を標榜し、実行している。通期ROTCE21%と高い収益力を持つ。

2. 「要塞のような堅固なバランスシート」Fortress balance sheet というように、財務体質の強さが強み。CET1(コア自己資本比率)15%に表れている。 

3. 高いリスク管理能力を持つ。収益力もさることながら、高いリスク管理がJDMの魅力。

4. 4Qに、四半期配当を、一株当り1.05ドルとし、前四半期の1.00ドルから5%増配。同四半期中に、20億ドルの自己株式の取得を実施。直近12カ月(LTM)の株主還元は併せて41%。株主還元に優れる。

5. 懸念をあげるとすれば、James Dillonの後継者問題だろう。Dillonの手腕により、JDMは業界で圧倒的No.1の地位を築いた。それは、いずれくるであろうポストJames Dillonの下で維持可能か、ということだ。また、James Dillonは、JDMのCEOというだけでなく、金融当局も含めた米金融業界に強い影響力を持ち、リーダーシップを発揮している。

バリュエーション

出門は、最後に、JDMのバリュエーションをチェックした。x4年xx月xx日時点で、Market Cap 554.922B、Beta (5Y Monthly) 1.12、PE Ratio (LTM)11.65x、Price/Book (mrq) 1.80x、Forward Dividend & Yield US$4.60 (2.40%) 、ROTEC15% (LTM)。

概ねフェアプラインス水準にあると推定。その強い競争力、卓越した収益力をかんがみ、押し目買いしたい大型優良株という感触を得た。

以上

 

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